自動車 解体#11左からBYDの劉学亮(りゅう がくりょう)副総裁、俳優の広瀬アリスさん、BYD Auto Japanの東福寺厚樹社長 Photo by Koyo Yamamoto

7月28日、中国自動車大手BYDの日本法人が、軽自動車の電気自動車(EV)「RACCO(ラッコ)」を発売した。27日夜にダイヤモンド・オンラインが報じた通り、メーカー販売価格は214万5000円からと、国内の軽乗用EVとして最安値を実現した。しかし、日本のEV市場では「見た目の安さ」だけでは勝てない。鍵を握るのが、国や自治体の補助金だ。補助金を適用した実質価格で比較すると、BYDの価格優位性は大きく薄れてしまう。特集『自動車 解体』#11では、日本の新車市場の4割を占める“牙城”である軽自動車市場で、RACCOは本当に競争力を発揮できるのか、その勝機と課題を追った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

RACCOは価格も航続距離も優位
だが補助金込みでは日系メーカーに及ばず

 7月28日、世界最大のEVメーカー、中国BYDの日本法人が軽自動車の電気自動車(EV)「RACCO(ラッコ)」を発売した。

 ダイヤモンド・オンラインが27日夜に報じた通り(『【スクープ】中国BYD初の軽EV「RACCO」の価格判明!43万円の補助金ハンデでも「実質100万円台」、日本の軽市場に殴り込み』参照)、最廉価モデル「RACCO 200」のメーカー販売価格は214万5000円。国内で販売される軽乗用EVの最安値となった。BYD Auto Japanの東福寺厚樹社長は、「多くの皆さまにとってお求めやすい価格を実現した」と胸を張る。

 RACCOの強みは価格だけではない。RACCO 200の航続距離は210kmで、日産自動車の「サクラ(Sグレード)」(244万9000円、180km)や、三菱自動車の「ekクロス EV(G)」(266万2000円、180km)を上回る。価格と航続距離のバランスで見れば、RACCOは高い競争力を備えている。

 ラインアップは3モデルだ。RACCO 200に加え、中位モデル「RACCO 300 Plus」(239万8000円、航続距離320km)と上位モデル「RACCO 300 Premium」(249万7000円、320km)を用意した。ホンダの軽EV「N-ONE e:(エヌワンイー)G」(269万9400円、295km)と比べても、コストパフォーマンスの高さは際立つ。

 軽乗用EV市場は、2022年に日産と三菱自動車が先行し、25年にはホンダが参入した。BYDは後発ながら、価格と航続距離を武器に、日本勢が築いてきた軽市場へ挑戦状を突き付けた格好だ。

 メーカー販売価格と航続距離だけを見れば、RACCOは日系メーカーと十分に渡り合える。価格を重視するガソリン軽自動車ユーザーを取り込めることも追い風だ。

 だが、実際の販売競争を左右するのが補助金だ。国や自治体の補助金を適用すると、BYDの価格優位性は大きく薄れてしまう。

 日本市場向けに専用開発されたRACCOは、このハンディキャップを乗り越えられるのか。次ページでは、補助金制度がBYDの競争力に与えるインパクトを検証するとともに、それでもBYDが勝機を見いだせる条件を探る。