遺言信託でもめたら手を引き、関わらない

信託銀行に依頼して公正証書遺言を作成すると、遺言の執行者も信託銀行になります。そして年間の保管料を支払い、公正証書遺言を保管してもらうのです。その後、相続になると公正証書遺言の内容のとおり、遺言執行者として遺言執行しますが、当然ながら財産の割合に応じて、執行料が必要です。

 ところが、最初から信託銀行が関わって作成した公正証書遺言なのに、相続人の間でもめてしまうと、信託銀行は遺言執行者の立場を降りてしまい、もめごとを収拾しようとはしません。大変なときこそ頼りにしたいのに、そこは期待できないのです。

生前対策のノウハウはない

 このように、信託銀行は相続後の遺産整理業務を主としているので、生前の相続対策の提案を期待できないかもしれません。銀行業務として、孫への教育資金として預金口座をつくって一括贈与をすることは信託銀行の業務ですが、それ以外、特に不動産を所有する場合の生前対策の提案はしてもらえないといえます。

 そもそも銀行業務が主ですので、不動産を扱っているとはいえ、相続や不動産実務に特化しているとはいい難く、相談しても系列会社を紹介される程度でしょう。

事例3)遺産整理業務だけで270万円かかり、アドバイスはもらえないKさん

費用は割高、アドバイスも期待できない <br />遺産整理よりも分割案、二次対策が重要

【相続事情】遺産整理業務に270万円かかると言われた

 Kさんの父親は信託銀行のOBです。定年後は再就職せずに、趣味の書に力を入れ、数多くの作品に取り組んでいました。3年前には、作品を集めて個展を開くことができ、多くの人から認めてもらえたことから、父親も家族もそれが自慢でした。

 父親が亡くなったとき、信託銀行のOBの方や口座がある取引店の担当も葬儀に来ていたので、ほどなく、相続手続きの案内がありました。