三井住友信託が規模の大きさを利用して新規顧客の獲得に走り、みずほ信託がグループの顧客基盤をフル活用して効率性を追求する中、長く業界の盟主だった三菱UFJ信託は優位性を保てるか。

 メガバンクグループ傘下という恩恵は頂戴しつつも、あくまで一銀行としてグループ他銀行からの独立性は堅持する“いいとこ取り”の戦略──。それで長らく業界トップに君臨していたのが三菱UFJ信託銀行だ。

「自前主義にこだわる三井住友信託さんとも、信託(機能提供)会社に徹しようとするみずほ信託さんとも違う」

 三菱UFJ信託の徳成旨亮専務がこう語るように、同行は独立系の三井住友信託銀行とは異なり、三菱東京UFJ銀行(BTMU)を中心とする三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)内の顧客基盤が利用できる。一方で、同じメガ傘下でも、貸し出しなどの銀行業務は最低限にとどめ、信託業務に経営資源を集中するみずほ信託銀行ほどには、信託業務に偏らないビジネスモデルを取る。

 もちろん、いいとこ取りといえども、常に業績が好調だったわけではない。ここ数年こそ収益が反転して回復に向かっているものの、2013年3月期の実質業務純益はこの10年間でピークだった07年3月期の6割弱という水準だ。

 おまけに業界地図も一変した。前出の三井住友信託は12年4月に住友信託銀行、中央三井信託銀行、中央三井アセット信託銀行が合併してできたメガ信託。同行の誕生で三菱UFJ信託は規模で業界2位に陥落してしまった(図(2))。

 ただ、利益率に目を転じてみると、この勢力図からはまた違った景色が見えてくる。