――でも、先月の消費再増税について議論した政府の点検会合では、有識者45人のうち、30人が法律通りの増税を求め、増税の延長・中止を求めたのは12人だけで(賛否を表明しなかったのは3人)、予定通り増税すべきだと言う意見が大勢でした。政府の考える経済状況と、安田会長が消費の現場から感じる景気や経済状況には、ずいぶん差がありますね。

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 増税に関して、霞が関ではまったく聞こえてこない論点があるんですよ。それはね、10%特有の怖さです。つまり、消費者は8%は暗算しにくいが、10%はパッと暗算できるということです。

 たとえば、消費税が8%のときに税込み2980円で売ろうとする。ということは、税抜き価格は2759円です。価格表示は外税表示が認められ、税抜き価格を表示してよいので、値札には税抜き価格だと表示をして2759円と書きます。

 これが消費税が10%になったときにどうするか。もしそのままの値札で税抜き価格2759円とすると、消費税10%だから3034円になる。10%だと暗算しやすいから、消費税分の275円を2759円に足すと、すぐ3000円超えると消費者は想像できます。

 これは小売業者にとって非常につらい。消費税10%でも2980円という割安感を演出するために価格設定をするなら、税抜き価格の2759円の方を値下げせざるを得ない。ということは、2709円となる。

 これは、そのままデフレ圧力として、ストレートに効いてきますよ。政府と日銀がとっているインフレ政策とは、真逆になるということです。これはほとんど議論されていない。小売業者からすれば、当たり前のことなんですけどね。

 何十円か値段を下げるということは、どういうことかというと、当社の経常利益率は約6%だから。そのマイナスの影響は極めて大きいですよ。そんなチキンレースをやれるんですか。もしかしたら、売上高1.5倍になっても、利益はあまり変わらないか、落ちてしまうということになる。10%というのは、計算しやすくてダメですね。

 外税表示というのが、激変緩和措置ということで認められましたけど、10%というのは激変緩和措置としての外税表示がまったく効かないんですよ。

なぜ歳出についての
議論を先にしないのか

――政府や与党の議論を聞いていると、歳出(収入)と歳入(支出)の、歳入だけを見ているように感じる。歳出の部分はしっかり議論をしているのかが疑問です。

 おっしゃる通りで、歳出と歳入の収支が合っていなくて赤字だから、それを補うためにすぐに増税しようとすることが問題です。

 本来は歳出の議論をするのが先です。そこが議論の中心にならないといけない。しかし、すぐに増税だと言って景気の「気」を冷やす。実際、4月の増税で足元はまさにそうなってしまいました。歳出を減らすということをなぜ先に言わないのか。「痛みを我慢して、皆さんご負担ください」とは言うけど、「痛みを我慢して、歳出を減らしましょう」とは誰も言わない。