前回、最新の住宅ローン事情や、住宅ローンを組むうえで注意すべきポイントについて、累計12万部突破のベストセラー『住宅ローンはこうして借りなさい』の改訂5版を上梓したファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんに、お話を伺った。後編は、より安心でおトクな住宅ローンを組むためのコツをお届けする。
住宅ローンを2つにわける、
一歩進んだローン活用法
——前編では「老後貧乏」にならないために最低限おさえておくべきポイントを伺いましたが、さらに一歩進んだ住宅ローンの活用法はありますか。
より安心でおトクな住宅ローンを組むためのコツとして、私は「ミックスプラン」の検討をお勧めしています。
ローンをひとりで借りる場合は住宅ローンを1本だけ組むのが一般的ですが、実は、金利や返済期間を組み合わせて「ひとりで2本組む」方法もあるんです。ローンが2本になると、印紙税など諸費用は多少かさみますが、さまざまなメリットを考えれば利用価値は大きいと思います。
たとえば「全期間固定金利で2000万円」「10年固定金利で1000万円」と、2本のローンで合計3000万円を借りるとしましょう。このような組み方をすると、先に1本だけ完済することが可能になります。
繰上げ返済する際に「少なく、短かく」借りた10年固定金利のほうを積極的に返していけばいいわけです。
仮に子どもたちの教育費のピークが15年後とすると、その時期までに10年固定のほうを返し終えていれば、残りは1本だけ。教育費が増える時期に毎月の返済額が少なくなるのです。残るローンは全期間固定ですから、返済期間の途中で返済額が上がる心配もなくなります。
なお、銀行によっては、複数のローンを組んだときに返済期間も別々に設定できるところもあります。
「全期間固定で2000万円、10年固定で1000万円」という例でいえば、「全期間固定を30年返済、10年固定を20年返済」というように、早く返済したいローンの返済期間を短くする「期間ミックス」にしてもいいでしょう。
ミックスローンは
銀行によって自由度が違う
——複数のローンというのは、どの銀行でもある程度自由に組めるものなのでしょうか?
ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年北海道生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い手寄り」のマネー情報を発信している。18年間で受けた相談は3500件以上。日本経済新聞、日経WOMAN、ダイヤモンド・オンライン等でマネーコラムを連載中。 主な著書に『30代で知っておきたい「お金」の習慣』『「投資で失敗したくない」と思ったら、まず読む本』(共にダイヤモンド社)、『共働き夫婦のための「お金の教科書」』、『図解 老後のお金安心読本~定年後の不安がなくなる』(共に講談社)、『50代から始める「お金」改革 定年後破産しないために今やるべき3つのこと』(すばる舎)他多数。
銀行のシステムの違いによって、ミックスプランの仕組みや費用は異なり、大きく3つのパターンに分けられます。「ひとりで2つのローンをミックスする例」について見ていきましょう。
ひとつめは、ローンを2本組み、ローン契約(金銭消費貸借契約)も原則2本、費用も2本分かかるというものです。それぞれが独立したローンなので、「期間ミックス」も可能です。二つめは、ローンを2本借りる形ではあるものの、銀行のシステム上は1本の扱いになるパターン。費用が1本分で済むのはメリットですが、異なる返済期間を設定することはできません。そして三つめは「複合型」で、ローン契約は2本、費用は1本分、返済期間ミックスは不可というパターンです。
住宅ローンを組む前には、どのようなミックスプランが可能なのかを銀行に確認し、「期間ミックス」を利用したいのか、「期間ミックス」にはこだわらず費用を抑えたいのかなど自分のニーズに合うところを選んだほうがいいでしょう。
なお、「返済期間をミックスしたいけれど、借りたい銀行ではシステム上、ローン契約が1本扱いになり期間ミックスができない」という場合は、2本のローンのうち1本の借入額を少なくすることで対処できます。返済期間ミックスの目的は「1本のローンを早めに完済する」ことですから、目的を最優先に考えましょう。