「社内政治に関する最良の参考書は何か?」。そう聞かれれば、私は『人を動かす』(デール・カーネギー、山口博訳、創元社)を挙げます。なぜなら、「政治とは何か」を突き詰めれば、自分が意図するように人を動かすことにほかならないからです。そのための原則をまとめた本書は、社内政治を考える際に絶対に避けては通れない必読書と言えるでしょう。
相手が求めるモノを与えるのが、
人を動かす唯一の方法
『人を動かす』には、社内政治にも通じる、重要なエッセンスが詰まっていますが、特に重要だと思われるのが「重要感を持たせる」という項目です。ここで、カーネギーはこう問いを立てます。
「人を動かすには、相手のほしがっているものを与えるのが、唯一の方法である。人は、何をほしがっているのか?」
その答えが、これです。
「すぐれた心理学者ウィリアム・ジェームズは、『人間の持つ性情のうちでもっとも強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである』という。ここでジェームズが、希望とか要望とか待望とかいうなまぬるいことばを使わず、あえて『渇望する』といっていることに注意されたい。
これこそ人間の心をたえず揺さぶっている焼けつくような渇きである。他人のこのような心の渇きを正しく満たしてやれる人はきわめてまれだが、それができる人にしてはじめて他人の心を自己の手中におさめることができるのである」
これは、私の実体験にも合致します。
たしかに、私自身、振り返ってみれば、実績が上がらず、誰からも認められず、誰からも相手にされないときほど、つらかったことはありません。結果を出すために激務をいとわなかったのは、ただひたすら人に「重要な存在」だと認められたかったからです。そして、私という存在を認めてれくれる人を「味方」だと認識して、その人の力になりたいと思う。これは、きわめて自然な心の働きだと実感します。
だから、私は、あらゆる人に「あなたは、私にとって重要な存在です」というメッセージを伝えることを意識しています。それが、「味方」を増やす最良の方法であり、政治力の根源となると考えるからです。