「褒める」よりも大切なこと
相手を褒めることも、「重要感」をもってもらう有力な一手です。
ただし、上手に褒めないと逆効果になることもあるので要注意です。ここでも重要なのは、具体的であることです。
ときどき、ただ単に「褒め言葉」をかけているだけという人を見かけます。しかし、「お前はすごい」「君はいつもがんばってるね」などという抽象的な褒め方では、相手の心には響きません。むしろ、それをくり返されると「口だけじゃないか? 本当に私のことをわかってくれてるのかな?」と不信感をもたれるのがオチです。
巧い人は、必ず具体的なシーンを織り交ぜながら褒めます。
たとえば、後輩の面倒見がいい部下に対して、「君は面倒見がいいね」とだけ言うのと、「昨日、A君の指導をしているとき、ちゃんと目線を合わせて話していたね。ああいうことを何気なくできるのは、実はすごく大切なことなんだよ」と言うのとでは、どちらが相手は嬉しいでしょうか? 明らかに後者です。
なぜなら、「ちゃんと、私のことを見てくれている」と思ってもらえるからです。人は「見てくれている」「気にかけてもらえてる」と実感できたときに、自らの「重要感」を満たすことができるのです。
幼児を観察すれば、それは明らかです。幼児は、親に注目してもらうために、泣いたり、おどけたり、イタズラをしたりします。「よしよし」とあやされるか、「何するの!」と叱られるか、それは彼らにとっては二の次です。とにかく、親の注目を一身に集めたい、「重要感」を満たされたい、というのが彼らの願いなのです。そして、親の注目を集めると、安心して眠りにつくのです。
これは、大人になっても変わりません。「あなたのことを、ちゃんと見てますよ」と伝えることが重要なのです。
その意味では、本質的には「褒める」ことが「重要感」を満たすことではないともいえます。よく「褒めるが8割、叱るが2割」などと言われますが、重要なのは「褒めるか叱るか」ではなく、相手のことを「ちゃんと見ているかどうか」なのです。実際、具体的なシーンを織り交ぜながら真剣に叱られたときには、むしろ「気にかけてくれている」ことに喜びを感じるものです。
つまり、「相手に重要感をもたせる」ためには、日頃から、一人ひとりに誠実な関心をもつことがもっとも大切だということです。「いま、どんな仕事をしているのか?」「何に悩んでいるのか?」「何が好きなのか?」「何を大切にしているのか?」……。そんな関心をもって、心をこめて観察することが、あなたの「味方」をつくる第一歩なのです。