あらゆる機会をとらえて、
相手に「重要感」を与える

 基本は「挨拶」です。

 挨拶とは、「私はあなたのことを認識しています」というサインを送ることです。いわば、相手に重要感をもってもらう初歩の初歩。ところが、これをなおざりにしている人がいます。

 たとえば、会社の廊下ですれ違っても挨拶ひとつせずに通り過ぎる人がいます。これは、恐ろしいことです。なぜなら、挨拶をしないということは、「あなたは、私が相手にするほど重要な存在ではない」というサインを送っているのと同じことだからです。日々、「敵」をつくっているのと変わりません。

「名前」で呼びかけることも大切です。
 興味深い心理実験があります。どんな言葉をかけられたときに、人間はもっとも喜びを感じるかを調査したものです。直感的に、「“ありがとう”“すごいね”などの言葉だろう」と思ったのですが、違いました。「本人の名前」なのです。

 たしかに、誰でも、関心のない人の名前をいちいち覚えようとはしません。つまり、「名前」を覚えているかどうかは、相手が自分という存在をどうとらえているかを測る尺度なのです。だから、相手に重要感を与えるためには、まず「名前」を覚えること。そして、「名前」で呼びかけることが重要なのです。

 実際、出世するほとんどの人は、これを実践しています。ある大企業の役員まで勤め上げた方などは、課長時代から、上層部はもちろん、直属の部下から関係部署の新人まで名前とそのプロフィールを手帳にメモをして、すべて覚えるように努力されていました。「まだ会社に馴染めていない他部署の新人に、名前で呼びかけたら100%顔を輝かせますよ。そして、僕のファンになってくれる」と言います。

 さらに、できる限り個別具体的な話題を投げかけると効果的です。
 たとえば、朝出社してくる部下に挨拶するだけではなく、「○○さん、昨日の打ち合わせ、どうだった?」とか、「たしか、今週末は家族旅行だったよね? 天気は大丈夫なんだっけ?」などと、その人ならでは話題を投げかけるのです。

 なかには、「どう調子は?」「今日も頼むよ」などと声をかける人もいますが、これでは効果は薄い。誰に対しても可能な声がけだからです。それよりも、個別具体的な問いかけのほうが格段に効果的です。なぜなら、それは「私はあなたのことに関心をもっています」「他の人とは区別して、唯一の存在として大切に思っています」というメッセージを伝えることになるからです。