WHOが新型インフルエンザにパンデミックを宣言したことで、中国でのオンラインショッピング利用者は加速度的に増えるかもしれない。
中国人の習慣として、ビジネスでは「関係(グワンシー)」と呼ぶ、人と人との繋がりを最も大事なもののひとつとする。その一方で、騙されるかもしれないからと見知らぬ人は信用せず、商品の受け渡しや金の受け渡しを避ける傾向がある。つまり中国人の習いからすると、オンラインショッピングは、本来は最も信用ならぬサービスであった。
そんなオンラインショッピングサービスの利用が始まるきっかけとなったのがSARSである。SARS大流行時、誰もが外出し繁華街でモノを買うのを極力避けた。そこで背に腹は変えられぬと、主に上海や北京などの大都市内でオンラインショッピングが利用され始めた。すなわち最新のテクノロジー・サービスを利用することを躊躇わぬ消費者と、販売者が大都市内に出現し、やりとりしはじめたのである。
パンデミック以外にも
利用者急増の要因は揃う
オンラインショッピングサイト市場のほとんどのシェアを握る、C2C(個人対個人取引)サイト「淘宝網」 |
大都市発の流行は、すぐに周辺都市から内陸へと広がっていった。08年末の時点で、中国全土で利用者7400万人にまで伸び、オンラインショッピング市場の取引額は年間1200億元(約1兆8000億円。1元=15円で換算)にまで至った。昨年からは日本勢も進出。日本郵便やSBIベリトランスらが中国向けオンラインショッピングサイトをオープンし、ユニクロやエイベックスやニッセンらが中国のオンラインショッピングサイトなどと提携し、メーカー直販サイトをオープンした。
SARS直後の初期のオンラインショッピングサイトは、人と人の信用だけに任されていたような状態だったが、今では、消費者・販売者どちらかが騙してもフォローのいくシステムに洗練されてきている。
中国のネット利用者は3億人を超えるのに、オンラインショッピング利用者は1億人にも満たない。今回のパンデミックを契機に、SARSのときのようにオンラインショッピングをはじめる人が急増することは十分ありうる。