原著の間違いを
徹底的に直した日本語第2版
この浩瀚な書物の第1版翻訳書は1977年にダイヤモンド社が出版しています。広大な領域にわたる実に難解な書物でした。文章も述語も難しく、挫折した人が多かったはずです。
第2版翻訳者の高橋さんが第1版と第2版を比較したところ、第2版への序文以外、ほとんど変わっていなかったそうです。
ところが、原著本文の間違いが次々に見つかります。さらに、原著の参考文献リストには900点が載っていますが、ここにも書誌の間違いが大量にあったそうで、高橋さんは全ての参考文献の書誌情報に直接当たっています。引用された文献リストには、原著の引用ページ、翻訳書の該当ページがわかるように記載さています。原著には引用した文献、引用していない文献の区別すらなかったそうです。
原著第1版における多くの間違いは原著第2版でまったく修正されていませんでした。つまり、著者のサイモンを含めて、第1版出版後からだれもチェックしていなかったことになります。最初から最後まで読んだ人はほとんどいなかったのかもしれません。
この第2版の翻訳書は、すなわち世界で最も正しい、おそらく原著よりも正しい『オーガニゼーションズ』ということになります。これほど徹底的に翻訳された書物はめったにありません。歴史に残る傑作です。
高橋伸夫さんは最後にこう書いています。
この1年半の翻訳生活で、私は常に、強く思い入れのある『オーガニゼーションズ』に、「古典」としての敬意を払って向き合ってきたつもりである。しかし翻訳作業が進むにつれて、おそらく世界最初の「組織論」の包括的・体系的テキストでもある本書を、テキストとしても読めるようにしたいという無謀な願望をもつようになった。/むろん原典は相変らず難解なままだし、翻訳ゆえの制約もある。しかし、訳文中に私が[ ]付で補った文言や、各ページの訳者脚注で基礎知識・周辺知識を補いながら読んでいただければ、大学の学部学生レベルの組織論のテキストとしても使える程度には、十分に分かりやすく、読みやすくなっているはずである。(略)まずは一読あれ。私は、大学の学部ゼミで最初に読むべき「組織論」のテキストとして本書を推奨したい。今の「組織論」はすべてがここから始まっているのだから。(「訳者あとがき」295-296ページ)