4月17日に筆者はシカゴで先物取引所を見学していた。電子取引が増加しているとはいえ、今でもフロアで行なわれるオープン・アウト・クライ方式の売買の熱気はすごい。相場が動き始めると地響きのような喚声がわき起こる。
近年は穀物や食肉などのコモディティ関連の取引も非常に活発であるため取引所はにぎわっている。シカゴ商品取引所(CBOT )では、トウモロコシ、大豆、エタノールが売買されているかと思えば、米国債先物など金融商品も取引されている。少し離れたところにあるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でも、ミルクや家畜のピットの脇を通り抜けて上がっていくと、ユーロドル3ヵ月物先物など金融関連が取引されている。
昨年、CBOTはライバルのCMEに買収された。現在、統合作業が進められている。CMEで取引されていた商品のピットがCBOTのビルに順次引っ越しているところであった。
見学していたこの日、ユーロドル3ヵ月物先物は大荒れの展開を見せていた。ドルのLIBOR(ロンドン銀行間オファー金利)が急騰したためである。
この日発表されたフィラデルフィア連銀製造業調査は悪化したため、通常であれば景気悪化懸念から金利先物は買われる(金利は低下する)。しかし、3ヵ月LIBORが異例の上昇(前日比+0.084%)を示したため、先物は逆に売られた(金利は上昇した)。きっかけは16日「ウォールストリート・ジャーナル」の記事である。
世界の金融業界の事実上のベンチマーク金利となっているLIBORの水準が実勢を反映していないと同記事は問題提起した。LIBORを公表しているBBA(英国銀行協会)は、LIBORRの評判を守るために調査を開始していると報じられた。
LIBORは16行のリファレンス銀行が期間ごとに実勢金利を提示。上下8行ははずされ、中間の8行の平均が固定レートとして毎日示される。これを基準にした企業や個人向けの貸し出しや、デリバティブ取引は膨大に存在する。
確かに、市場関係者のあいだでは、昨年夏のサブプライムローン問題による流動性クランチ勃発以降、LIBORが実勢よりも妙に低い水準にたびたびなっていたことがうわさされていた。記事がきっかけとなって、4月17日から数日間、LIBORは不自然ながらも急上昇した。
LIBORの上昇から生じる金融引き締め効果を相殺するためにも、FRBは4月末に0.25%程度の利下げを行なう必要があると思われる。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)