2014年10月1日付で、中堅造船会社の名村造船所グループ(建造量で国内4位)は、佐世保重工業(同10位)を完全子会社化する。これで、今治造船グループ、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)に次ぐ、第3グループの誕生となる。なかなか業界再編が進まなかった造船業界で、上場企業同士による経営統合に踏み出す名村建介社長を直撃した。

なむら・けんすけ/1973年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、名村造船所に入社。2003年、米ボストン大学経営大学院修了(MBA)。04年、経営業務本部経営管理部長。05年、取締役。10年、代表取締役副社長。11年4月より代表取締役社長に就任。7代目社長であり、名村家出身の社長としては4人目。趣味は、子どもとスキーをすること、国内外の推理小説を読むこと。
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──ほんの少し前まで、国内では新造船の需要が低迷して2013~14年にかけて手持ち工事がなくなるという「2014年問題」が取り沙汰されていました。しかしながら、円高の是正によって各社の受注環境が好転したことで、業界再編の機運は薄まりました。なぜ今、佐世保重工業の完全子会社化なのですか。

 確かに、円高の是正が進んだことで、当面の仕事量は確保できています。

 しかし、いわゆる「2014年問題」は解消されたように見えるかもしれませんが、私たちの問題意識は異なります。例えば、13年の世界全体の新造船の受注量は1億総トンを超えています。近年は、5000万総トンを切るぐらいの水準で推移してきたことを考えれば、不自然なほどに積み上がっています。1億総トンという数字には、相当量の“投機的な発注”が含まれているのですが、5000万総トンを実需だと想定すれば、「(現在、世界に存在する)造船所の半分は必要なくなる」という見方もできます。社内では、そのような厳しい言い方をしています。