理由を問うと、ある会社は「自社で昔から実施している能力開発プログラムがあり、不都合は感じていない」という。また、「グローバル本社から決められたプログラム以外は実施するなと言われていますので」、「2015年4月以降のプログラムは既に決定していますので」という理由もあった。

 私はこの経験を通じて、ビジネス部門と人事部門の認識のギャップの大きさをあらためて痛感した。能力開発プログラムを実施する人事サイドは「能力開発プログラムに不都合は感じていない」と言う一方、同サービスを享受するビジネス部門は「人事部門に任せておけない」と、正反対の見解を示している。

 ビジネス部門の参加者へ、「当社のワークショップに参加するかわりに、自社の人事部門の支援を仰げばよいではないですか?」と問うと、「自社の人事部門に任せられるはずがないではないですか」という答えが即座に返ってきた。能力開発について、ビジネス部門は、もはや、「人事部門には頼まない」というレベルにまで諦念を持たれているのである。

「社員は成長なんてしない」
人事の持つ性悪説がビジネス部門に嫌われる

 人事部門とビジネス部門との間で、なぜこのようなギャップが生じてしまったのであろうか。その理由のひとつに、人事部門とビジネス部門の、社員に対する役割認識の違いがあると思えてならない。

 すなわち、極論すれば、人事部門は経営者の意向に従いながら、本社やトップタレントが持っている方針やノウハウを徹底しようとばかりする。社員に対しては、性悪説に基づいており、何度言っても変わらないと思っている。だから「せめて失敗をしないように」という視点で教育をする。

 一方、ビジネス部門は社員のニーズを汲み取りながら、ビジネスの現場で一般社員が持っているノウハウを共有して能力向上を図ろうとする。また、「社員は誰しも成長する可能性がある」との性善説に基づいているから、試行錯誤による成長を奨励する。