他人の期待との大きな乖離
実際に「稼ぐ」ことは難しい

 不安が募っていた9月だったが、年末に近づくにつれてちょっとずつ新しいお仕事をいただき始めるようになった。そして、その多くは、筆者のまったく予期していなかったものであった。

 すなわち、本人がやれるだろう、あるいはやってみたいと思っているものと、周りの人が認めている本人の能力の間には、かい離があるのだ。

 かつて、パートナーの根津が「いただける仕事は金額にかかわらずどれも大切です。ある仕事より他の仕事が大事という区別はできないんです」と言っていたことを思い出す。

 根津の言うとおり、お金を稼げる機会をいただくということは本当にありがたいことだと実感している。

 そして、自分の期待と他人の期待にかい離がある中で、実際に「稼ぐ」ことは本当に難しいことだと思う。

「苦労せよ」のメッセージを
落選して初めて理解した

 実は、筆者が応募した政府の起業家支援プログラムについて、応募前に知り合いのベンチャー企業の社長たちに話をしたことがある。

 今だから言うが、どの社長もそのプログラムについて否定的であり、共通して「起業家は創業時には苦労しなければならない」と言われたのだ。

 誤解のないように言っておくが、こういう発言を紹介しているのは、プログラムに通過したチームを否定しているわけではない。社長たちの発言に、筆者に対する個人的なメッセージが暗に含まれていたことを、今になって理解したからだ。

 つまり、ビジネスの世界を知らない役人が起業するのであれば、「稼ぐ」ということの難しさと「仕事をいただく」ということのありがたさを、早い段階で知る必要があり、そのためには創業時の苦労が必要だと言いたかったのだと思う。

 加えて、元役人が政府の支援を得ながら、苦労しないまま起業家人生を歩んではならないという、親心的な警告の意味もあったのだろう。

 自ら創業期の苦労を乗り越えてきたベンチャー企業の社長たちは、予め筆者にそのことを伝えようとしたのだろうが、お金がもらえそうなことに目がくらんだ筆者は、落選して初めてそのメッセージを理解したのである。