米国政府から救済を受け破たんを免れた米大手保険会社AIG。救済のために1800億ドル(約18兆円)もの巨額の税金が投入された一方で、同社を破たん寸前にまで追い込んだ金融子会社AIGファイナンシャルプロダクツ(AIGFP)の社員に対し、合計2億1800万ドル(約218億円)のボーナスが支払われたことが問題視されている。
そんななか、ボーナスを受け取ったAIGFPのある社員が、AIGのエドワード・リディCEOに対して提出した抗議の辞表が米紙ニューヨークタイムズに掲載され、話題を呼んでいる。
辞表に書かれている内容は、以下のとおり。
(1)私は今回の大損害を引き起こしたクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に関連する業務には一切関与していない。それどころか、CDSとはまったく関係のない部署で多額の利益を挙げてきた。何より、CDSで大損を出した社員はすでに退職している。
(2)AIGを取り巻く困難な環境下で、複雑な残務処理を行なっているわれわれに対し、AIG幹部は残留特別手当として今回のボーナスを支払うことを約束してきた。
(3)リディCEOは、AIGの政府支援が決まった後に請われてCEOに就任し、年棒1ドルで大変な役回りを引き受けた人物であり尊敬している。だが、政治家や司法長官などによるボーナスを返済するべきだとの根拠のない非難からわれわれを守ってくれなかったことに失望している。
(4)他の金融機関からのオファーを断り、残留契約のもと12ヵ月間働いた結果、受け取る権利のあるボーナスを返上しろといわれてもその気にはなれない。ただ唯一、返上しようという気にさせるのは、“恐怖”である。あろうことか司法長官という立場にある人間が、ボーナスを受け取った人物の氏名を公表すべきと発言したためだ。
(5)その結果、私は辞職を決意し、ボーナスとして受け取った約74万ドル(約7400万円)は、今回の金融危機で被害にあった人々に全額寄付することに決めた。
この抗議に対し、理解を示す向きもあるが、AIGは税金で救済された会社である。つまり、ボーナスの原資は税金だ。いくら契約とはいえ、73人の幹部に100万ドル(約1億円)以上のボーナスを支払い、その内の5人は400万ドル(約4億円)を超えている。それだけの高額ボーナスを支払うことには、とうてい世間の理解は得られないだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)