前回は公的年金の財政検証結果や、それを踏まえた改革案がオヤジ世代に与えるインパクトについてお話ししました。これらの改革により、確かにオヤジ世代が将来受け取る年金の減額幅は抑えられるかもしれませんが、目先の負担も増えることになるため、オヤジ世代には全体的に厳しいものになるでしょう。一方で、たとえ改革案が実現しても所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金の割合)が現状より下がることは不可避な状況で、改めて企業年金の重要性が評価され始めています。

 しかしながら、企業年金のある企業の数は急速に減少しており、公的年金の減額分をカバーする存在としては非常に心もとない状況です。そこで現在、政府は社会保障審議会企業年金部会にて、企業年金をより使いやすいものとし、一層の普及を図るための改革について議論しています。今回はその議論の方向性とオヤジ世代への影響についてお話しします。

企業年金はもはや一部の人だけのもの!?

 まず数字で実態を見てみましょう。驚くことに、企業年金を実施している企業の割合は2000年以降急速に減少し、1997年の46.6%から2013年には25.9%まで下がってしまいました(厚生労働省「就労条件総合調査」)。つまり、今や企業年金は4社に1社の割合でしか採用されていない状況です。

 この現状をどう評価すればよいのでしょうか? OECDの報告書によれば、先進国の平均は公的年金の所得代替率が40%(OECDの定義)、私的年金の資産規模が対GDP比で75%くらいですが、日本は公的年金の所得代替率は先進国平均より少し低い35%(同上)、私的年金の資産規模は25%と平均を大幅に下回る状況です。公的年金も私的年金も先進国対比で低いレベル、特に企業年金については「後進国」に位置すると言っても過言ではないのです。この現状を変えるために、政府は一般企業向けと中小企業向けにそれぞれの対応を検討しています。