過去3回のコラムを通じて、仮想世界で横行する金融犯罪を紹介して来た。その代表例となるマネロン(マネーロンダリング)と、その手段として利用される可能性が高い媒介物の共通点については、これまで述べて来た通りだ。

 また、仮想世界が“国家”という概念を曖昧にすることから、法管轄までも曖昧となってしまう現状において、各国の法規制にもとづくマネロン対策だけでは不十分であり、企業が独自にマネロン対策に乗り出すべきであることの重要性についても、述べて来た。

 そこで最終回では、仮想世界の金融犯罪であるマネロンの危険性を再確認すると共に、企業が取るべき対応を総括する。

 また、マネロン対策が企業のビジネスの成長を加速させる1の例として、EBM (Event-based Marketing)の活用法も紹介したい。

 まず、マネロンの標的になる可能性が高い媒介物の共通点を、もう一度振り返ってみよう。

 マネロンには、高い換金性、流通性、価値の普遍性、匿名性、そして運搬性の5つの条件が求められる。これは、第3回コラムで電子マネーを例に挙げながら詳しく説明した。

 電子マネーがマネロンの標的にされ易い理由は、次のような特性を持っていることにある。

 まず、「現金の代替手段」として一般的に利用されることから、換金性、流通性、及び価値の普遍性が高いこと。また、サーバー内に電磁的に管理されていながらも、その金銭情報に個人情報が付加されていないことが多いことから、高い匿名性も併せ持つこと。さらに、情報ネットワークの上に作られた仮想世界をわずかな時間で移動する、優れた運搬性も備えていることである。

 つまり、電子マネーは、情報技術によってID化された金銭価値が、“情報ネットワーク”という世界中に張り巡らされた流通網を瞬時に駆け巡ることができることから、仮想世界におけるマネロンの“媒介物”として高い危険性をもつ代表例なのである。

マネロンの媒介物になる可能性も
“ポイントプログラム”の特性とは?

 このような可能性を備えているのは、仮想世界では電子マネーだけなのだろうか? 実は、見逃せないもう1つの媒介物がある。

 それは電子マネーとも密接に係わり合いを持つ“ポイントプログラム”(以下、ポイント)である。