現在、仮想世界では多種多様のビジネスが展開されており、もはや「現実世界で享受できるサービスは全て仮想世界でも受けることができる」と言っても過言ではない。
仮想世界に存在する商店からサービスや商品を購入するネットショッピングでは、金銭決済に欠かせない通貨が必要となる。この金銭決済のひとつに、仮想世界で流通する通貨“電子マネー”がある。
第2回コラムでも述べたとおり、電子マネーの実態とは、現金が持つ金銭価値を電磁的金銭として情報化したものに過ぎないため、通貨としての存在や保有者の特定は極めて難しく、マネーローンダリング(マネロン)の標的となり易い。
そこで今回は、仮想世界で横行するマネロンと常に密接に関わる電子マネーに焦点を当てる。
果たして電子マネーは、今後マネロンの常套手段となってしまうのか?また、2009年に予定されている「電子マネー関連法」改正は、電子マネーをマネロンから守ることができるのか?
これらのポイントを考えつつ、過去のケースを踏まえながら、マネロン対策について考察する。
2012年までには5兆円規模に!
小口決済で定着した電子マネー
まず、電子マネーとはわれわれにとってどのような存在なのだろうか?
電子マネーとは、数ある資金決済手段の1つであり、「チャージ」と呼ばれる金銭の前払い行為によってICチップ、もしくは管理サーバーに金銭価値情報として記録されたものを指す。
記録された金銭価値は、仮想世界や現実世界にかかわらず、電子マネーが利用可能な商店で現金の代わりとして決済に利用することができる。
広義には、電子マネーは“前払い式”と“後払い式”の2通りに分類されるが、前払い式を指して電子マネーと呼ぶことが一般的である。以下、特別な断りがない限り、前払い式電子マネーを電子マネーと呼ぶ。
そもそも電子マネーという言葉は、法的に定められたものではなく、01年 に発行された「Suica」(JR東日本株式会社)や「Edy」(ビットワレット株式会社)をきっかけに、広く人々の間で使われるようになった言葉である。