東京・丸の内にあるビルの3割を保有する三菱地所は巨額の含み益を抱える。だが、資産効率は競合他社に比べて低いため、株主還元を求める声が高まる恐れもある。
三菱地所に元気がない。ライバルである三井不動産の株式時価総額はわずか2年で3倍に上昇し、昨年9月には1980年以降で初めて三菱地所を追い抜いた。三井不動産がトップとなったのはわずか1日のことではあったが、両社は肩を並べている。
三井不動産に追い付かれた最大の理由は成長力の評価にある。
三菱地所の成長の中核は、丸の内エリアに保有する約30棟のビルを建て替えることで貸し床面積を拡大することにある。
営業利益の約7割をビル事業が占め、ビル事業の営業利益の6割前後を丸の内エリアが占めるとみられる。丸の内エリアでは2017年度までに四つの再開発が予定されており、いずれも既存ビルの建て替えだ。
一方、三井不動産は昨年1月末、本拠地である日本橋から八重洲にかけて、新たに八つの大型再開発を公表。昨夏には32年ぶりの公募増資で3300億円を得ており、さらなる大型再開発の観測もある。こうした開発パイプラインの多さが三井不動産の市場評価を押し上げている。
足元の業績もライバルに比べて見劣りがする。
昨年10月に発表した通期の業績見通しでは、三菱地所は大手3社の中で唯一、減益の見通しとなった。経常利益の通期見込み額は、三井不動産が1560億円、住友不動産が1380億円なのに対し、三菱地所が1080億円と、300億~480億円も低い。
こうした中、三菱地所は昨年11月末にはみずほ銀行前本店ビルの信託受益権を手放すことで365億円の特別利益を計上するなど業績改善を計っている。