今回は、ストレスと「認知」の関係についてお話をします。いきなり「認知」と言われても、ピンとこない方が多いかもしれません。日常生活では馴染みが薄いこの「認知」という言葉は、もともと心理学の専門用語で、ストレスの「コーピング」(対処)と強い結びつきがあり、その意味で、ストレスコントロールには重要な言葉とされています。
前回(第6回)、私が「コーピングの訓練」のところで一番大事だと言ったことを思い出してください。「嘆かないこと」でした。「ストレスにどう対処(コーピング)するか」は、まず嘆かないことから始める。嘆かずに、落ち着いて、するべき事を整理してからその先を考える。するべきことを整理するためには、自分の置かれている状態や、周囲の状況などを、正確に知らなくてはなりません。これを「認知している」と心理学では言います。「コーピングの訓練」は、認知から始めます。
心理学では「認知」は、第1段階・第2段階とあって、訓練もひとりで出来ることなので、次のようにやってみてください。
「認知」の第1段階――「把握」
すばり「自分にストレスを与えているストレッサーを正確に知っていますか」です。これができていないことを「把握が低い」と言います。把握が低ければ、コーピングはできませんし、その先のストレスコントロールの効果も出てきません。
把握には、「洞察力」という、人間の感覚機能を使います。あらゆることが頭の中でぐちゃぐちゃになって、身の回りに起こるすべてがストレッサーのように見えている時は、感覚機能が鈍っていて、洞察が全くできてない状態です。
洞察力を強めるには、どんな些細なものでもよいですから、ストレッサーと感じるものを、メモにして書き出していくことから始めます。周囲で嫌だと感じるものを、吐き出すようにメモしていくのです。何日かけてもいいのです。じっくり書き出していきます。そうすることで、「洞察力」がついていきます。
嫌な人の名前でもいいですが、名前のメモだけではダメです。その人の何のどこが嫌だと思うのか、例えば「何さんの言ったナニナニという言葉が、ずっと心にひっかかって残っている」といったように。ここで、「あーメンドクサ!」となったり、「そんなことしたら、ますます落ち込むじゃない」と思ったりするのは、心が落ち着いていない証拠です。嘆かず、真剣に、真面目に、書き出していってみてください。