最近、マイクロソフト、グーグル、さらにはヤフーといった、「IT業界の巨人たち」の動きが活発化している。

 かつて、世界のソフトウエアを牛耳っていたマイクロソフトは、次のビジネスチャンスを模索してヤフーとの連携を強める方向に動く一方、検索エンジンの分野で圧倒的なシェアを誇ってきたグーグルは、コンピュータ起動の心臓部とも言えるOS(オペレーティング・システム)への参入、すなわち「Google Chrome OS」の開発を表明した。

 これらの動きは、世界経済の後退による販売・広告収入が激減したことをきっかけに、IT業界の巨人たちが、従来の常識を覆すような“仁義なき戦い”の局面に入ったことを意味する。

 “仁義なき戦い”の背景には、利益の減少に加えて、IT業界を取り囲む経済状況の急変がある。

 情報・通信分野は、20世紀末にかけて“IT革命”と称されるほどの大変革を遂げた。その変革のお陰で、人々は居間で寝そべりながら、世界中で起きているニュースに瞬時にアクセスできるようになった。

 それは、産業分野にも大きな変化をもたらし、世界経済のグローバル化を支える最も大きな要因の1つとなった。

 ところが、IT分野が進化し、さらに新しい段階に入ると、IT企業同士の競争が激化することは避けられない。

 特に、世界経済が急落している現在において、競争はますます激化している。たとえば、企業が宣伝広告費を絞る動きが加速すると、ポータルサイトを運営するIT企業は、有力な収入源であった広告料収入が激減してしまう。

 そうなると、有力企業といっても、既存のビジネスモデルばかりにしがみつくわけには行かない。新しく儲けられるビジネスモデルを構築しなければ、生き残ることさえ怪しくなる。

 さらにIT業界は、今後、超大型コンピュータに必要なデータやソフトを集中させる、“クラウドコンピューティング”の時代へと移行することが予想される。

 その“クラウド時代”に生き残るために、ITの巨人たちは、かつての恐竜のように弱肉強食の戦いに身を投じることが必要になる。それが、すでに始まっているのである。