桜井 古くは「おしん」とか、日本のドラマも一部は海外で放映されているみたいですけど、海外展開はまだまだということなのでしょうか?
大石 そうですね、まだ翻訳版が中心ですよね。私の作品も翻訳版が出たり、今もある作品について米国でリメイクを検討いただいたりしていますが…誤解を恐れずに言えば、米国に対しては良い意味でも悪い意味でも、どんな国か知りたいし既にある程度知っているという、米国ドラマの“視聴者予備軍”が世界中に沢山います。アジアの端っこにある日本についても、世界中の多くの人からもっと知りたいと思ってもらえないと、本格化はしないでしょうね。脚本家も本気でグローバル化を目指すなら、英語で書けないといけないでしょうし。
キラリと光る俳優の条件は
「空間占有率」「透明感」「背中」
桜井 大石さんといえば、才能のある若手の俳優さんの“目利き”としても有名です。
大石 ウィキペディアでは堺雅人さんの名前まで挙げられているけど、あれは間違いで(笑)。私が推したのは、内野聖陽さん、佐々木蔵之介さん、長谷川博己さんだけです。
桜井 佐々木蔵之介さんと言えば、京都の蔵元(<聚楽第>などを展開する佐々木酒造)のご子息ですね。
大石 そうです。彼は後を継ぐつもりで進学した神戸大学(農学部醸造学科)在学中に演劇にのめり込んでしまったとか。結局、家業は弟さんが継いで、彼自身は長らく勘当状態だったのが、NHKの『オードリー』に出演したのを契機にお父様にも役者も“男子一生の仕事”と認めてもらえたみたいです(笑)。
桜井 これぞと目をつけた俳優が必ず大スターの道を歩むなんて、すごいですね。伸びる人をどうやって見分けるんですか?
大石 芝居が上手いのが大前提ですけど、あとは空間占有率が高いとでも言えばいいのかな? その場に居るだけで目を引くオーラを持っている人。清潔感を超えた“透明感”のある人。それと、前から見ていくらイイ男でも、後ろ姿がだらしないとダメですね。小林一三翁(阪急東宝グループ創始者)が「人間は表にあらわれ、背にあふるる」と仰ったと聞いて、思ったとおりだわ!と自信を持ちました。
桜井 確かに、背中はふだん意識しない分、無防備にその人のありようが出そうですね。とにかく、逸材はひとめで目を惹く何かを持っていて、すぐに見分けられる、というわけか。
大石 そうです。そういうオーラや透明感は、努力して出せるものではありません。彼等が生まれつき持っているものです。だからステキなんです。選ばれし才能というものは…。