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「成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みを気にしてはならない。利用できるかぎりのあらゆる強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを総動員しなければならない」(『経営者の条件』)
強みを生かすことは組織特有の機能である。ドラッカーは、組織における権力の正統性の基盤も、この人の強みを生かすという組織の機能に置くべきであるとまでいう。
組織といえども、人それぞれが持つ弱みを克服することはできない。しかし、組織は人の弱みを意味のないものにすることができる。
成果をあげるには、強みを中心に据えて異動を行ない、昇進させなければならない。人事には、人の弱みを最小限に抑えるよりも、人の強みを最大限に発揮させなければならない。
ドラッカーは、リンカーンの例を引く。グラント将軍の酒好きを聞いたとき、リンカーンは「銘柄がわかればほかの将軍たちにも贈りなさい」と言ったという。
できることではなく、できないことに気をとられ、弱みを避ける者は弱い人間である。しかし部下が強みを持ち、成果をあげることによって苦労させられた者など、一人もいない。
「アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑に刻ませた『おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る』との言葉ほど大きな自慢はない。これこそが成果をあげる処方である」(『経営者の条件』)