自己の成長も会社というハコも、
目的や使命を全うするための手段

前回のコラムに書かせていただいた通り、恵まれた環境にあった私が三菱商事を辞めたのは、入社3年目になったばかりの頃です。その数ヵ月前に、大学同級で仲が良かった岩瀬大輔君(現ライフネット生命保険社長)と温泉旅行に行ったことがひとつのきっかけです。弁護士の道を蹴って、新卒でBCGに入社した岩瀬君は、学生時代からずば抜けて頭が良い印象でしたが、道中の何気ない会話から、岩瀬君の雰囲気に大きな変化を感じました。

 知恵には更に磨きが掛かった上、ビジネスセンスや胆力まで備わり、同じ2年足らずの社会人経験の中で、ビジネスマンとしてのマチュリティ(成熟)や厳しさを、私より格段に身につけているように思えたのです。その時の焦りのような感覚を、今でもはっきりと覚えています。そこで初めてBCGに対する興味が湧いたんですね。

 当時はBCGも今ほどは知られていませんでしたし、規模も今の4分の1もない位だったと思います。実際、私も何の会社なのかも良く知りませんでした。今で言うとベンチャー企業のような感じです。

 それでも飛び込んでみようと決めたのは、さらなる研鑽をより早いスピードで積みたい、というチャレンジ精神(というかただの負けん気)や、数年後はおろか、数ヵ月先も予測できない、得体の知れないことに対するワクワク感、やりたいこと(メディア、エンターテイメント)に、より早く近づく(ための1つの手段)といったことのためだ、と当時は考えていました。

 何度か面接を受け、どう見ても一番若そうに見える最後の面接官が、「一緒に働こうよ」と言って手を差し延べてきたのが、なんとなく型にハマってなくてカッコイイなぁ、というのが最後のひと押しとなって転職を決めた訳です。

 では、ここまで可愛がって育てていただいた三菱商事の反応はどうだったか。かなりきつく言われるだろうと覚悟して、直属の上司から順に、恐る恐る相談しに行きました。

 しかし、予想に反して上司、先輩、国内・海外の取引先やパートナー、皆が応援してくれて、本当に驚きました。当時の本部長をはじめ複数の方々から、私が辞めるとか辞めないとかは大した問題ではない、結果的にどの会社で働こうとも、大きな志を持って頑張っていくことが重要なんだ、という趣旨のメッセージをいただきました。これは、三菱グループの三綱領(特に所期奉公)の精神そのものです。