アベノミクスで景気は本当に良くなったのか? なかなか効果を実感できない金融政策だが、そもそもどうやって景気を回復させようとしているのだろうか? 今さら知らないとは言えない経済の基本を、新刊『今までで一番やさしい経済の教科書[最新版]』の著者・木暮太一氏が、どんな経済オンチでも一発でわかるように解説する。
商品を買うのは、個人か、企業か、外国人か?
経済ジャーナリスト、一般社団法人 教育コミュニケーション協会 代表理事。慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・団体向けに「説明力養成講座(わかりやすく伝える方法)」を実施している。 フジテレビ「とくダネ!」(木曜レギュラーコメンテーター)、NHK「ニッポンのジレンマ」、Eテレ「テストの花道」などメディア出演多数。 『カイジ「命より重い!」お金の話』『超入門 資本論』など著書多数、累計120万部。
今、日本経済は正念場を迎えています。「今」というより、この20年ずっとかもしれません。2012年から、“アベノミクス”が始まり、一時はこれで日本経済が復活する! という期待を抱いた人も多かったでしょう。しかし、しばらくするとこの状態です。やはりそんな簡単に復活することはできませんでした。
しかし、政治の舞台では引き続き「今度こそ景気回復!」と叫ばれています。いつ選挙をやっても、必ず「景気回復させます!」という“公約”が掲げられていますね。
でも、実際にはどうやって景気を回復させるの?
まず、そこを知りたくなりますよね。ここでは、「どうすれば景気が良くなるか?」に着目して説明をしていきます。そこで突然ですが、質問です。なぜ、景気が悪いんでしょうか?
なぜって、モノが売れないからでしょ。
そうですね。モノが売れないから、景気が悪いんです。これを少し堅苦しく言うと「需要がないから、景気が悪い」となります。今さらっと「需要がない」と書きましたが、ここはもう少し細かく考えなければいけません。「需要」とは、「誰かがほしがっている」ということですね。でも、一体「誰」がほしがっているのでしょうか?
そんなの知らないよ。っていうか、そんなこと考えて意味あるの?
すごく大事なことです。これがわからないと、政府が行っている景気対策の意味がわからなくなります。反対に、これがわかっていれば、「あ、なるほど、この施策はこういう意図でやっているんだね」と理解できるようになり、また新聞やテレビのニュースを見たときに「この出来事は、日本経済にこんな影響を与えそうだな……」と予測することができます。
なんか難しそうだな……。
いえ、そんなことはありません。原理原則を知っていれば簡単なことです。結論から言うと、「需要」は3種類に分かれます。それは「(1)国民(個人)の需要」「(2)企業の需要」「(3)海外からの需要」です。言い方を変えると、「誰が商品をほしがっているか?」で、その商品をほしがっている人は3人いる、ということです。
つまり、日本の商品を買っているのは、国民(ぼくら個人がほしいから買う)、企業(会社の仕事で使うから買う)、海外(外国人が買ってくれる)、ということです。
うん、なるほど。で?
国全体で需要が少ない、だから景気が悪い、といっても、どこの需要が少ないのかによって、どこの需要を増やしたいのかによって、実施すべき政策が変わるんです。「国民(個人)の需要」を増やすためにできる施策と、「企業の需要」を増やすために実施する施策は全然違います。
分解して考えなければ、適切な対策が取れません。そして、ぼくらも各政策の意図がわからなくなります。そういう意味で、需要を3種類に分けて捉えるというのは大事なことです。一つずつ、具体的に説明していきましょう。