(1)国民(個人)の需要
よく言われている「需要不足」「今の時代は需要がないからなぁ」というフレーズは、この「個人の需要」を指しています。「国民(個人)がモノを買わないから景気が悪い」ということですね(この「国民〈個人〉」のことを、ニュースや新聞では「家計」と表現しています。家計簿の「家計」です)。
個人が商品を買わないということは、お店の商品が売れないということです。それは困りますね。では、この「国民(個人)の需要」を増やすためにはどうすればいいでしょうか? 言い方を換えると、個人にもっと買いものをしてもらうためには、どうすればいいでしょうか?
それは、その人たちの給料を増やすってことじゃない?
その通りです。所得が増えれば、買い物をする量が増えそうですね。その他にはどうすればいいでしょうか?
え、他に? もうないよ。
そんなことありません。では反対に「買い物をしない理由」を考えてみましょう。それがなくなれば、買い物が増えそうです。
不景気とはいっても、日本はまだまだ世界の中では「超お金持ちの国」です。国民の資産を足し合わせると1600兆円以上になり、単純計算すると国民1人当たり1300万円程度を持っている計算になります。買い物するお金を持っていないわけじゃないんですよね。では、買い物をしないのは、なぜ?
……貯金しなきゃいけないから。
そうですね。その理由が大きいと思います。「日本人は世界で一番お金を持って死ぬ」と指摘している人もいるくらいです。つまり、たくさんお金を持っているのに、「いざというときのために」といって、いつまでたっても使うことができないんですね。そして結局、たくさん資産を抱えたまま、使わずに死んでしまうのです。
国民がいつまでもお金を使えないのは、「老後にお金がなくなったら大変!」と思っているからです。そして同時に、「そのときは、国は助けてくれない」と思っているからです。
であれば、国民が老後の生活について安心できるようになれば、お金を使ってくれるかもしれません。もしくは、「これから景気が良くなりそう、これから日本社会が良くなりそう」と思うだけでも、お金の使い方が変わるかもしれません。
「気分を変える」という主観的で、抽象的な作戦ですが、これが結構大事です。「病は気から」と言いますが、「景気も気から」です。国民の需要は、(A)国民の給料を増やすこと、(B)国民の気分を盛り上げること、で増えていきます。