(3)海外からの需要

 日本の景気をなんとかしたい、と思うと、ついつい日本国内でなんとかしなきゃいけないと考えてしまいがちです。でも、日本の商品を買うのは、日本人だけではありません。海外のお客さんも日本の商品をたくさん買ってくれます。海外のお客さんが日本の商品を買う方法は二つです。

 一つは、日本から輸出すること。そしてもう一つは、日本に買いに来てもらうことです。両方とも、外国人に買ってもらうということは変わりませんが、「増やす方法」は異なります。

 どうやってやるの?

 まず、輸出を増やす方法。輸出を増やすために直接的に有効なのは、「円安にすること」です。単純に考えるために、今「1ドル=100円」だとしましょう。日本で100円で売られているものが、アメリカで1ドルで買えるということです。

 ここで円安になりました。「1ドル=200円」になったとしましょう。1ドル200円ということは、0.5ドル=100円ですね。日本で100円の商品が、円安になったためにアメリカで値下がり(1ドル→0.5ドル)したわけです。

 値下がりすれば、当然アメリカのお客さんは買いやすくなります。日本の企業から考えると、「売りやすく」なります。「円安になると、輸出しやすい(海外のお客さんに買ってもらいやすい)」のです。だから、輸出を増やしたいと思えば、円安にすればいい。それが直接的な対策です。

 なるほどね、だからアベノミクスで円安にしたんだね。

 また、商売する相手が増えれば、単純に考えて売れる量も増えていきます。いまや、日本は世界各国と貿易をしています。とはいえ、すべての国と同じように仲良く、頻繁に商売しているわけではありません。中には、いろいろな規制があって商売できないこともあります。

 そういう規制をなくし、制度的に自由に貿易ができるようになったり、もしくは国同士が仲良くなれば、もっと多くの商品を買ってくれるでしょう。少し前に話題になったTPP は、輸出を増やすための施策として進められていました。

 そしてもう一つ。海外のお客さんに、日本に商品を買いに来てもらうことも考えられます。つまり、外国人旅行者を増やして、日本でもっとお金を使ってもらおうということです。2001年の小泉政権以来、日本は外国人観光客の受け入れに力を入れてきました。その結果、着実に観光客が増えています。

 国土交通省のデータによると、外国人旅行者は、平均で約15万円を日本国内で使うそうです。だとしたら、この観光客が1万人増えたら15億円、何かが売れるということですね。100万人増えたら、1500億円お金を使ってもらえるということです。

 日本に観光客を呼び込もうとするのは、日本の良さを知ってもらおうという文化的、人間関係的な意図もありますが、日本の商品が売れるという経済的な理由も大きいんです。これが「海外からの需要」の意味と、それを増やすための作戦です。

 まとめると、日本の商品を買ってくれる人は3タイプいます。(1)日本国民(個人)が買う、(2)企業がビジネス用に買う、(3)海外のお客さんが買ってくれる。今説明したように、それぞれを増やすための作戦(実施するべき政策)は異なります。基本的には3つをすべて増やすことを考えますので、それぞれに効果がある政策を、どんどん実施することになります。

 ぼくらも経済のニュースを、これは誰の需要を増やす政策なのかを考えながら見ると、すごく面白いです。また同時に、その政策で本当に需要が増やせるのかを考えてみると、より理解が進むはずです。

 次回からは、景気対策のための具体的な政策内容について詳しく見ていきます。(第2回へ続く)