景気対策のための税金の使い道といえば、真っ先に公共事業が思い浮かぶかもしれない。しかし、公共事業は国の歳出のわずか6%。では、多くの割合を占める使い道とは何か? なかなか景気の回復を実感しない今こそ知っておきたい、財政政策の現状と税金の使い道について、新刊『今までで一番やさしい経済の教科書[最新版]』の著者・木暮太一氏が、どんな経済オンチでも一発でわかるように解説する。

財政政策って何をするの? 

木暮太一(こぐれ・たいち)
経済ジャーナリスト、一般社団法人 教育コミュニケーション協会 代表理事。慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・団体向けに「説明力養成講座(わかりやすく伝える方法)」を実施している。 フジテレビ「とくダネ!」(木曜レギュラーコメンテーター)、NHK「ニッポンのジレンマ」、Eテレ「テストの花道」などメディア出演多数。『カイジ「命より重い!」お金の話』『超入門 資本論』など著書多数、累計120万部。

 景気対策には「金融政策」と「財政政策」の二つがあります。前回は「金融政策」の話をしましたが、今回は「財政政策」について説明しましょう。

 財政政策とは、簡単に言うと「政府が、国民から集めた税金を使って、景気を良くしようとすること」です。

 もちろんやみくもにお金を使うわけではありません。意味があることにお金を使います。ただ、「必要なものにお金を使う」というよりは、「景気を良くするために、お金を使う」という意味合いの方が、かなり強いです。

 ちなみに、「必要なものにお金を使う」という場合は「財政政策」ではなく「財政支出」と、別の名前がついています。

 ってことは、財政政策は、「とにかくお金を使うこと」が目的なの!?

 そうです。まったく無意味なものには使いませんが、「国民の生活を良くするために、必要に応じてお金を使おう」という感じではありません。「必要に応じて」ではなく、「○○円使う」ということが目的です。景気を良くするために、政府が国民から集めたお金を使うんです。

 でも、政府がお金を使うっていうのが、よくわらかない。

 政府は商品やお弁当を買うわけではありません。もしくは「よぉし、ビールを買って国民に振る舞おう」といってコンビニで買い物するわけではありませんね。もっと大掛かりなものを買います。

 財政政策で使うお金は、「公共事業」やインフラ整備などに向けられます。たとえば、長年「ムダ」として非難され続けている「道路の補修工事」やダムなどは、「財政政策」で造られたりしています(もちろん中には、景気に関係なく、必要だから造るというものもあります)。

 大まかに言うと「財政政策」といったら「公共事業を実施すること」とイメージしていただいてOKです。

 これって景気対策なんだよね? 道路工事をすると、なんで景気が良くなるの??

 それは、「企業が仕事を受注して、利益が増えるから」です。個人の買い物とは規模がまったく違いますが、財政政策も「誰かにお金を払って作ってもらっている」という意味では「商品を買っている」ということと同じですね。つまり国が財政政策を実施すると、世の中の商売の量が増えるんです。そしてその効果が、世の中全体に波及していくのです。