昼時のドライブスルーはクルマの行列

 アメリカのファーストフード・ハンバーガーと言えば、日本の大方の読者は、マクドナルドを想像することだろう。とにかく安いし速いし便利だと……。

 そんな先入観念を持って、「イン・アンド・アウト・バーガー」を訪れれば、恐らくアッと驚くことになる。昼時のイン・アンド・アウト店舗は、ハンバーガーが焼き上がるのを待つ人、空席を探している人、店の外から行列を作っている人でごった返しているからだ。

 普通のファーストフード・チェーンでこんなことが起これば、たいていは殺気立った雰囲気になるものだが、イン・アンド・アウトでは決してそんなことにはならない。何せここに来る人々はみな、イン・アンド・アウト・バーガーの忠誠かつ熱狂的なファンだからだ。

 レストラン調査のザガットは、先だって6100人以上を対象にファーストフード・レストランのサーベイを行ったが、イン・アンド・アウトは、ウェンディーズやバーガーキング、マクドナルドを抜いて、「ベスト・バーガー」チェーン部門および「ベスト・サービス」部門で1位に選ばれた。9万4000人を対象にした別のサーベイでも、イン・アンド・アウトは、「食の品質」「清潔さ」「お買い得感」で1位となり、顧客満足度で最高点を獲得した。イン・アンド・アウト・バーガーは、アメリカの秘宝的な存在なのである。

 では、イン・アウト・バーガーの人気の秘密はどこにあるのだろうか。ひとことで言えば、それは「安全でおいしい食材」に尽きる。

 イン・アンド・アウトは、アメリカの中でも西海岸地域の4州(カリフォルニア、アリゾナ、ユタ、ネバダ)でのみ展開し、230店舗余りを運営する。調理・配送センターから効率的に冷凍ハンバーガーなどの食材を多数の店舗に配送する通常のファーストフード・チェーンと異なって、イン・アンド・アウト各店舗に納入される食材はすべて「フレッシュ」、つまり新鮮なものばかりだ。

 同社のウェブサイトによると、イン・アンド・アウトでは電子レンジも冷凍庫も、調理済みの食べ物を保温するヒートライトもない。肉は、卸業を通さず、イン・アンド・アウト自らが厳選してきた牛肉の塊を、自社工場ですべて骨を取り去るところから加工し、ミンチ肉にしてハンバーグをつくる。