『森のイスキア』主宰・佐藤初女氏のところへは、女優・大竹しのぶさんや、総理大臣夫人・安倍昭恵さんなど数多くの有名人が「おむすび」を学びにくる。
また、全国から自殺寸前の人がやってきてそこで「食」をもてなされると活力を得て帰っていく。まさに「ふるさと」のような地が青森・岩木山麓にある『森のイスキア』だ。
1995年公開、龍村仁監督『地球交響曲<ガイアシンフォニー>第二番』でその活躍が世界中で注目された佐藤初女氏。
その初女さんが93歳の集大成書籍を出したという。『限りなく透明に凜として生きる―「日本のマザー・テレサ」が明かす幸せの光―』。93歳で元気の秘密はどこにあるのか。(構成・池田純子)

10代~30代の闘病生活で
薬を海に捨てていたわたし

佐藤初女(さとう・はつめ)1921年青森県生まれ。1992年、岩木山麓に『森のイスキア』を開く。病気や苦しみなど、様々な悩みを抱える人々の心に耳を傾け、「日本のマザー・テレサ」とも呼ばれる。1995年に公開された龍村仁監督の映画『地球交響曲<ガイアシンフォニー>第二番』で活動が全世界で紹介され、国内外でも精力的に講演会を行う。アメリカ国際ソロプチミスト協会賞 国際ソロプチミスト女性ボランティア賞、第48回東奥賞受賞。2013年11月の「世界の平和を祈る祭典 in 日本平」でキリスト教代表で登壇。チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ法王と初対面。その際、おむすびをふるまう。『おむすびの祈り』『朝一番のおいしいにおい』など著書多数。(撮影:岸圭子)

 わたしは2015年10月で94歳になりますから、講演会でもしょっちゅう「健康で長生きするには、どうしたらいいのですか」と聞かれます。

 わたしは何十年も薬を飲んでいないし、風邪もひいていないの。
 わたしは10代~30代までの長い間、闘病生活を送っていたけれど、薬を飲むのが嫌で、こっそり海に捨てていたの。だって、まずくて飲めませんよ。

 そんな闘病生活中のあるとき、おばが鯛を届けてくれて、それをお吸い物にして食べたんです。
それがほんとうにおいしくて体のすみずみの細胞が躍動するような感じがしたの。

 ああ、食べるものでこんなに元気になるんだって。
 それで薬じゃない、これは絶対に食べ物なんだって、それ以来ずっと思っているの。

 薬を飲むのとは全然違いますよ。
 それから病気のときも、この病気が悪くなると考えないで、絶対に抜けていくと考えていましたから、そういう気持ちも大切でしょうね。

 だから、健康の秘訣を聞かれたら、まずやっぱり3度の食事をきちんととることって答えます。

 過食にならないように自然なものをきちんと食べて、何も要求がないように暮らしています。まさに透明ですね。
 体調はだんだん衰えていくので、無理をせず、せめて現状を維持。がっかりしないで現状だけは維持していきたいと、ひそかに祈っているんですよ。

 朝、時間がなくて朝食を抜いてしまうことがあると、もうその日の午後はまったく動けなくなりますから、朝ごはんもしっかり食べたいの。どうしても時間がなさそうなときは、おむすびを握って持っていくこともあります。
  
「好物は何ですか?」とよく聞かれますが、わたしは好き嫌いはありませんので、何でもおいしくいただきます。
 でも、あけびの実は苦手ですね(笑)。