健康診断の数値やお腹回りのサイズは気になるが、1日を締めくくる“至福の一杯=ビール”はやめられない。糖質やカロリーなどを抑えた「機能性ビール類」の存在も知っているが、どうにも物足りなさを感じてしまう。そんな健康志向の高いビールユーザーにうってつけの、「日本初」の商品が誕生したという。一体、どんなビールなのか? 気になるその味は? 正体を探るべく、発売元のアサヒビールに向かった。

ビール好きが飲んでも
“機能性と気付かない”味

 まさに百花繚乱の盛況ぶり、というべきか。昨年、ビール大手4社だけでも50超もの新商品が誕生し、熾烈なバトルが繰り広げられる日本のビール類市場。そこに他の商品とは一線を画す、新しいコンセプトのビールが登場した。

 アサヒビールから3月10日、発売された「アサヒ ザ・ロイヤルラベル」(セブン&アイグループ限定発売)。瓶のラベルのイメージを現代風にアレンジしたというデザインと深みのあるグリーン色の缶。重厚な落ち着いた佇まいのパッケージでひときわ目立つのが、「日本初」「麦芽100%使用」「糖質40%オフ」の文字。そう、これは「機能性ビール類=発泡酒or新ジャンル」という従来の公式を打ち破り、麦芽100%使用のビールで糖質40%カットというスペックを実現した日本初の商品なのだ。

 コンセプトの立ち上げから携わったマーケティング第一部の寺門誠さん曰く、「ターゲットは、健康志向の高い50代以上のビールユーザー」だという。となれば、機能だけでなく、味も相当なハイレベルなものを求めているに違いない。

 そこで寺門さんが口にしたセリフがふるっていた。目指したのは「ビール通の人が飲んでも、糖質オフとは気付かないビール」だというのだ。

 ビールの旨みに関わる糖質をカットすればスッキリとした味になる。それを薄いと感じる人もいるだろう。これはある意味、従来の機能性ビール類の宿命でもあったが、今回は違う。「これで糖質オフなの? と多くの方に驚いていただきたかった」と寺門さん。「糖質オフの割にはおいしい」ではなく、レギュラービールと競っても負けない味を実現したというのだ。

開発を担当したマーケティング第一部寺門誠さん(左)と酒類開発研究所 酒類開発第一部の山口洋生さん

 なぜこのようなビールを開発するに至ったのか。いや、むしろなぜビールで糖質オフの商品がなかったのか。そんな疑問もわいてくる。その問いに対しては、中味の開発に携わった酒類開発第一部の山口洋生さんの率直なセリフが一つの答えとなった。「最初に商品のコンセプトを聞いたときは、正直『ムチャ言うなあ』と思いましたよ」。

 そう、後述するように麦芽を多く使用するビールで糖質オフを実現するのは、技術的にとてつもなく難しいのだ。加えて、日本ならではの特性も、機能性市場にビールが切り込む障壁になった側面もあるという。