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必要な性能の半導体を、必要なときに必要な量を確保できるか。それはもはや一企業の事業計画を左右するレベルにとどまらず、国家の経済安全保障上の最優先課題になっている。米中の対立が深まるなか、各国ともに半導体サプライチェーンの強化に躍起になっているが、日本はどう立ち振る舞うべきなのか?地政学に経済安全保障の観点を取り入れた「地経学」の第一人者が、日本が取るべき方針を提示する。※本稿は、政治学者の鈴木一人『地経学とは何か 経済が武器化する時代の戦略思考』(新潮選書)の一部を抜粋・編集したものです。
先端半導体の生産能力が
地経学的パワーを定めるポイント
半導体は、今や地経学的パワーの競争の大きな争点になっていて、先端半導体の覇権を持つか否か、もしくは先端半導体をつくれるかつくれないかという能力の差が、軍事的優位性や国際競争力の維持に直接影響するということが大きなポイントです。つまり、他国に対する戦略的な不可欠性を西側諸国として集合的に強化するということが、地経学的なパワーにつながっているのです。
これに対して、今の中国では、先端半導体がつくれないのであればレガシー半導体(編集部注/回路の線幅が14~16ナノメートルを超える古い世代だが、一般的な家電製品や自動車などに広く使われている)で支配的な存在になるという戦略を取っています。つまり、レガシー半導体へ積極的に投資をして安価な半導体を世界中の市場に提供することにより、日本やその他の国にある既存の半導体メーカーから市場を奪い、中国の半導体が圧倒的な存在になることを目指すようになりました。







