このエピソードを聞いて、「他人事ではない」と感じた読者は少なくないのではないか。高齢者人口が増え続ける日本では、足もとで高齢者の大量死が始まっている。相続手続きに直面する人は増える一方だ。しかし、たいていの人は相続のノウハウに明るくないため、いざというときに途方に暮れてしまう。

 とりわけ都会在住の地方出身者は、突然親が亡くなったとき、Bさんのように自宅と実家の間を往復することになり、疲弊する可能性がある。幸いBさんは兄弟仲がよかったため、人間関係のトラブルは経験しなかったが、人によっては相続を巡って関係者の仲が悪くなり、人生に大きな禍根を残すこともあるだろう。

相続税は富裕層だけにかかるもの
という考えは、もはや通用しない

 そこで今回は、いざというときに備えて身に付けておきたい基本的な相続の知識を、専門家である弁護士や司法書士、税理士などの声を交えて解説しよう。いつ「そのとき」が来るかは誰にも予想できない。だからこそ、普段から意識しておく必要があるのだ。

 始めに、相続に関する最新のトピックを紹介しよう。この1月に改正された相続税法について、改めておさらいしておきたい。平成26年までは相続税の基礎控除額が「5000万円+1000万円×法定相続人の数」だった。替わって27年からは「3000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられた。端的に言うと、基礎控除額が従来の6割になったということだ。

 たとえば、4人家族の主人に相続があった場合で考えると、26年までは基礎控除額が8000万円となる。この場合、相続財産が8000万円以下であれば、確実に相続税は発生しなかった。一方、今年からは基礎控除額が4800万円となる。つまり、4800万円を超える相続財産があれば、相続税がかかる可能性があるということだ。

「今回の相続税法改正により『相続税は富裕層だけにかかるもの』といった既存の常識は通用しなくなったと言えます。都心にマイホームがあり、預貯金が少しという標準的な家庭でも、相続税が発生するケースが出てきているのです」と話すのは、「野田美和子税理士事務所」代表で、共著に『「経理・財務」実務マニュアル上・下』『法人税実務マニュアル』などがある税理士・野田美和子氏である。