運行終了に伴い、ネットオークションで数十万円もの値段が付いた寝台特急・トワイライトエクスプレスの切符。このほかにも、最近の鉄道グッズは異様な高値で取引されている。その背景にはどんな事情があるのだろうか?(鉄道ジャーナリスト・阪南大学客員講師 中嶋茂夫)
3月14日に行われたJR各社のダイヤ改正は、寝台特急北斗星(上野~札幌間)の定期運行終了と寝台特急トワイライトエクスプレス(大阪~札幌間)の運行終了、そして、北陸新幹線(長野~金沢間)の新規開業とネタに事欠かない1週間となった。
その舞台裏で繰り広げられたのが、これらの列車の切符争奪戦だ。瞬時に売り切れたこれらの切符は、正規料金の10倍以上の数十万円もの金額でネットオークションで取引されたのだ。なぜ、このような鉄道ファン垂涎の貴重な切符がネットオークションで出品されるのか?
それは、ネットオークションで転売することを目的に切符を購入する「ダフ屋(転売ヤー)」と呼ばれる人たちの存在がある。今回は、切符や鉄道グッズをネットオークションで販売する是非について考えたい。
東京駅開業100周年のSuicaにファン殺到
しかし9年前は売れ残っていた
昨年12月20日、東京駅開業100周年記念Suicaの販売時に、東京駅の売り場が大混乱を起こしたことは記憶に新しい。1万5000枚の発行を予定したところ、何千もの人が朝早くから駅前に並び、大混乱が起こったことから途中で販売を打ち切り、希望者全員に販売する措置に変更した経緯がある。
オークション履歴を調べると、驚くべき方法で出品しているツワモノがいた。12月20日の発売前にこの記念Suicaを出品しているのだ。落札者に朝イチに購入すると約束し、万が一購入できなかった場合は返金に応じるとしている。一見問題なさそうだが、在庫のないものをネットオークションで販売するのはネットオークションのルールに違反する。しかも、このパターンで100件近くの取引が完了しているのに驚く。
今から9年前の2006年3月17日。「東京駅ルネッサンス」記念グッズの一つとして、「東京駅ルネッサンス」記念Suicaイオカードが限定1万枚で発売された。
しかし、このSuicaの発売日に混乱を招いたという記録はない。事実、12年頃にネットオークションに出品されたものが、2000円未満の原価割れの価格で落札されているのをいくつも確認できる。