「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

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言ってはいけないNG発言

みなさんは、子どもに対してつい次のように言ってしまっていないでしょうか。

・「どうして勉強しないの?」
・「なんでゲームばっかりやってるの!」

夏休みなど、時間の使い方が自由な時期になると、特にこうした声かけが増えるのではないでしょうか。

親としては、「ちゃんと過ごしてほしい」「勉強してほしい」という思いから出る言葉です。けれども、この「理由を問い詰める」言い方は、子どもにとっては“圧のある詰問”になってしまう可能性があります。

今回は、その理由と、よりよい聞き方について考えてみましょう。

「よくないと自分でも思っていること」に、圧をかける危うさ

たとえば、子ども自身もどこかで「このままじゃまずいな」と思っているような状況だったとしましょう。

宿題がたまってきている、ゲームの時間が長くなってきた――そんな自覚がうっすらあるときに、

・「なんでまだやってないの?」
・「どうして勉強しないの?」

と問い詰められると、どうなるでしょうか。

子どもは言い訳をしたり、ごまかしたり、時には不機嫌になって反発してくるかもしれません。
でも実はその裏側にあるのは、「責められている」「問い詰められている」という感覚です。

これは、親と子という立場の差があるからこそ生まれる“プレッシャー”です。親としては単なる問いかけのつもりでも、子どもにとっては、「叱られた」「責められた」という体験になってしまうのです。

会話のヒント:「事実質問」でつなぐ

では、どうすればよかったのでしょうか。ポイントは、「理由」ではなく「事実」を聞くことです。

つまり、「どうして?」ではなく、「いつ?」「何を?」「どれくらい?」という、具体的で中立的な質問に置き換えていくのです。たとえば、こんなふうに。

× よくない聞き方
「どうして勉強しないの?」
「なんでまだ宿題やってないの?」
◎ よい聞き方(事実質問)
「夏休み始まってから、今って何日くらい経ったっけ?」
「そういえば、最近宿題やったのっていつだった?」
「日記って、今何日分くらい残ってるのかな?」

このように、「ただの確認」の形で事実をたどっていくと、子ども自身が自然と状況を“整理”し始めます。

・「えっと、夏休み入ってからもう半分くらい?」
・「宿題?…あ、最後にやったのは先週かも」

こうして、親が叱らなくても、子ども自身が「やらなきゃ」と思えるようになるのです。

子育てに限らず、対話は、どちらかが質問し、相手がそれに答えることから始まります。よい人間関係の基本には、よいコミュニケーションがあり、よいコミュニケーションの出発点には、良い質問があるのです。

(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろしです)