[CFOフォーラム・ジャパン2014 CFO講演]
オムロンの企業力向上への取組
~逆ROIC経営~鈴木 吉宣 氏
オムロン株式会社 代表取締役副社長CFO

財務力――規模と高収益の両立

 財務力では、2020年度までに、グローバルエクセレンスゾーンへの到達を目標としている。独自に目標化したグローバルエクセレンスゾーンは、売上高1兆円以上、営業利益率15%以上である。アップル、インテル、GE、J&J、3M、TIといったグローバルエクセレントカンパニーが名を連ねるゾーンを目指して、規模拡大と高収益の両立を狙っていきたい。

現場力――逆ROIC経営

 規模と高収益の両立を実現するために用いているのが、逆ROIC経営である。ROICは社内的に展開しやすい。例えば営業利益率で展開すると、事業によって収益力に差があるため、収益力の低い事業は、早々にクローズして収益力の高い事業に移すことになりかねないし、それぞれの事業従事者の士気にも影響する。それでは、5つの事業を保持しつつ協同を含めた新規事業を探索・実現し、長期的に成長していくことは不可能だ。

 しかし、営業利益率が低い事業でも、ROICなら上げることが可能だ。例えば、営業利益率7%であった車載事業が、狙っているROICは14%だ。この数字は他の事業と遜色ないレベルである。このように、ROICは異なる事業体の中にあって、共通的に評価しやすいという特徴を持つ。

 もう一つ、ROICは分解しやすいという特徴がある。まず、「営業利益率」と「投下資本回転率」に分解できる。さらに、営業利益率は、「売上総利益率(付加価値率、製造固定費)」「販管費率」「営業利益率」「営業外損益」「当期利益率」に分解でき、投下資本回転率は、「運転資金回転率」「固定資産回転率」に分解できる。それぞれの指標から、部材標準化や海外生産比率から実効税率まで具体的なKPIが設定され、それぞれの現場で目指す姿と活動を一致させることができる。こうした特徴によって、現場でこだわる目標指数を導き出し、経営理念であるチャレンジ精神やソーシャルニーズの創造に挑戦できると考えている。それぞれの現場が目標を掲げ精査し、再びアクションを起こすというPDCAサイクルを部門の中で回していくことが狙いである。目指す姿、KPIをさらにブレイクダウンして、チームとしてこだわる指数を目指し、部門独自で評価していく。達成できなければ新たなプランで再度試みる。こうしたPDCAを回しながら、一歩一歩愚直に目標達成を狙っていく――そのサイクルを回し続けるのが逆ROIC経営である。

 各部門でどんな指標にこだわり、どう展開していくか。それを見ながら、売上高1兆円超と営業利益率15%達成に向けて全社で取り組んでいるところである。

成功のための人財力

 成功のために最も重要なのは「人財」である。企業理念の下、多様なメンバーとチャレンジし続けるチームをリーダーが牽引することで、全社ビジョンを実現する。その鍵を握るのは、人財である。オムロンには同質の人間が多い。押しなべて真面目で素直なイエスマンである。そして、徐々に考えなくなっているという危惧を抱いている。私自身、本当に社長に苦言を呈せるか。私の部下が私に反対意見を言えるのか。知らない間にイエスマンをつくってはいないか。日本人が海外で日本的経営を行うことを海外の方たちはどう思っているのか。市場に本当に対応できているのか。「チャレンジし続けるチーム」「多様なメンバー」を掲げながらも、日常的にそれが実現されているのか――いろいろ努力して施策を実行しているが、人財力強化についての自問は尽きない。

 チャレンジ精神を発揮するために、ソーシャルニーズを創造する努力を推進すべく、いろいろなグループイベントを設けている。また、次世代リーダー育成・獲得のために、世界中に189のコアポジション(グローバルな最重要ポジション)を設けて実施している「コアポジション戦略」もある。コアポジションの人事と育成は社長権限で進められている。各取締役が定期的に会って相互理解と新たな気づきの機会を設け、個々人が自らの役割・意志・そしてマクロ動向とリスクの感度を高めていく。そうした企画を今後も実施し、将来のサクセッサーをつくり続ける運営をしていきたいと思っている。

 新しい機会の創出を求めて、新たなグローバル経営を進めていくことは、一方ではリスクの拡大を伴う。経営理念の基本である、一人一人の可能性を信じ(人間尊重)、事業で社会課題を解決し(ソーシャルニーズの創造)、リスクを見極め自ら実現していく(チャレンジ精神)。そういった経営の基本姿勢を、もう一度グループ全員で築いていきたいと願っている。

 本日はご清聴ありがとうございました。

※本稿は、2014年12月2日開催の「第14回CFOフォーラム・ジャパン2014」の講演内容を、日本CFO協会編集部にてまとめたものです。