今回の財務マネジメント・サーベイは、フランスCFO協会主導のもとに、企業内で経営管理(コントローラー)部門が果たしている役割を明 らかにするために2010年に開始された調査で、昨年はIAFEI(International Association of Financial Executive Institute)加盟の世界17カ国の団体の協力で国際的な規模で実施され、31カ国の実務家から回答を得た。日本CFO協会も、会員企業各位の協力 を得て、協会として調査に参加している。ご協力をいただいた企業の方々に、誌面を借りて改めてお礼を申し上げたい。
日本企業ではあまり馴染みがないが、欧米系の企業においては必ずコントローラーという職種があり、トレジャラー(財務部長)との対比で、一般的に経理部 長と訳される。日本の経理財務部門の業務のうち、実務(経理決算作業や入出金管理、資金為替など)以外の業務に関して責任を持つ役職で、経営管理部長に近 い。日本企業においては、事業計画の策定や業績管理など、管理会計系の業務を経営企画系の経営管理部長が担当するケースが多い一方で、財務報告など制度会 計系業務については、財務経理系の伝統的守備範囲となっており、コントローラー業務が大きく制度会計系と管理会計系の二つに分かれている場合が多い。これ が欧米系企業との相違点となっているようで、ご回答者の業務がどちらに軸足を置いているかでサーベイの回答も違ってきているようだ。この違いを頭の隅に置 いて、日本企業との対比も含めてサーベイの結果を見ていくとしよう。
コントローラーの業務
コントローラーの業務には財務報告、計画策定、予算作成、予実差異分 析、予測、業績分析(ビジネスレビュー)、事業部門との調整、情報システムおよび内部統制が含まれる。コントローラーの時間を100%とした場合に、財務 報告18%、計画・予算策定16%、予測13%の順に時間を費やしているが、本来なら最も付加価値の高い、事業部門との調整、予算実績差異分析等の業務に もっと時間を割くべきと多くの回答者が考えている。
実際の業務時間割合とその業務の付加価値の関係を表した図1を参照し てほしい。内部統制、情報システムは付加価値も低く、時間もあまり費やしていないのが見て取れる。面白いのは売上が伸長している企業が、内部統制や情報シ ステムに注力しているのに対して、売上が減少傾向の企業は、内部統制や情報システムに割いていた時間を減らし、予測に最も注力していることだ(表1参 照)。売上減少傾向の企業にとって、今後の事業の方向性を決定する上で、近い将来を正確に予測することが必須条件となるからだと推察される。
コントローラーにとって最も付加価値が高く時間を割きたいと考えている業務が、事業部門との調整だ。「さまざまな指標や分析ツールを駆使して事業の拡大 や効率化に社内コンサルとして積極的に寄与したい」という熱い思いが伝わってくる。日本企業も事業ごとにコントローラー機能を持つことを検討する必要があ るのではないか。