大手不動産仲介各社による宅地建物取引業法違反とみられる行為の数々が記録されたデータが、業界の一部で出回り始めている。本誌では同データを独自に入手した。今後、不正行為の実態が明るみに出れば、各社に厳しい処分が下される可能性もある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

「あのデータが表に出たら不動産業界は大変なことになるだろう」

 ある不動産会社の幹部がそうささやくデータが、一部の業界関係者の間に出回り始めている。

 不動産仲介各社による「物件の囲い込み」と呼ばれる不正行為の実態を調査したレポートだ。業界でまかり通る不動産取引の悪弊を憂いた有志関係者がまとめたとみられる。

 このレポート、結論からいえば、大手各社の信じ難い不正の数々が克明に記録されている。

 そもそも物件の囲い込みとはどういう行為なのか。それを知るためには、不動産の仲介手数料の仕組みを知る必要がある。

 不動産仲介会社の収入の大部分は、物件の売り主もしくは買い主からの仲介手数料である。例えば成約価格が400万円超の場合、仲介手数料の上限は「成約価格の3%+6万円」となる。

 そこで多くの会社では、不動産仲介会社が1社で売り主と買い主の仲介を行う、いわゆる「両手仲介」(図参照)を狙うことになる。仲介手数料は売り主と買い主から得られるため、6%+12万円と2倍に増えるからだ。

 実際に両手仲介はどれぐらい行われているのか。主要各社の平均手数料率は、下の表の通りだ。大手は5%前後に上っている。仮に全てが両手仲介であれば6%となることを考えると、この5%というのは相当に高い数値だ。