子どもを信じて、
親が率直に自分を語れ
石坂 それにはやっぱり親が子どもを信じて、率直に自分のことを語ることが大切。私は、「いい人がいたら再婚するかもしれない」という話もします。
すると息子は冗談で「○○国に行けば一夫多妻性だから結婚しやすい」なんて言ってくるし、娘は「お母さんはわがままだから、お金持ちの男じゃないとダメなんじゃないの。そういう人を見つけるなら銀座に行くべきよ」とアドバイスしてくれる(笑)。カジュアルに言いたいことを言えるようになってよかったです。
小島 信頼関係が大切っていうけれど、実際、どういうときに信頼を感じるかというと、打ち明け話をされたり、相談されるときでしょう。弱みを見せるとか。
石坂 そうですね。特にネガティブな気持ちについて相談されるとすごく信頼されている気になる。
小島 子どもには自分が悩んでいる姿を見せたくない、失敗する姿を見せたくないという人もいるけれど、私は失敗したことを相談したり、さびしいときにはさびしいと言うとか、お互いの生の感情を共有することが大切だと思っています。
子どもは「さびしい思いをさせるお母さん」が嫌いなのではなく、「さびしい思いをさせたうえに放っておくお母さん」が嫌いなんです。同時にさびしい思いをしているお母さんは仲間なんです。
石坂 仕事で韓国に行ったとき、子どもたちもさびしかったけれど、私もさびしかった。帰ってくると2人でマンションの外で待っているのが見えて、思わず涙が出そうになりました。そのあと重い荷物を一生懸命に運んでくれました。
小島 私は夫と子どもたちをオーストラリアにおいて、1ヵ月ごとに日本に出稼ぎにきています。テレビ電話で話をすると、「ママはいつになったら日本に戻らなくていい仕事になるの?」と言うんです。
私は正直に「見通しは立っていないんだ」と言います。すると、「僕だってわかってるよ。ママがずっとオーストラリアにはいられないって」って言うんです。
「残念ながら、いまのところ私がお金を稼げるのは日本しかないけど、働き方を工夫して少しでも長くオーストラリアにいられるようにがんばるね」と伝えました。
この12年間いろいろなことがあったけれど、家族全員がヒーローだと思っています。はたから見てどんなに風変わりでも、私たちはこうやって生きてきたし、全員ががんばったから。
石坂 まわりからどう見られるかというより、自分にできることをやっていくことが大切ですよね。いま子どもたちはiPadで私の予定を見て、「すごい過密スケジュールだけど体は大丈夫なの?」とか、「今日は会議だから夜遅いよね。ごはんはまかせてね」なんて言ってくれます。
小島 立派に育っている! そういう親子関係っていいですね!
石坂 今日はどうもありがとうございました。
小島 こちらこそどうもありがとうございました。
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。