昨年秋のリーマンショック後、世界経済は凄まじい勢いで落ち込んだ。それに伴い、今では世界経済にとって無視できない懸念が浮かび上がっている。それは、“保護主義”の台頭だ。
各国の経済状況が悪化すると、それぞれの国が自国の産業を守るため、海外からの製品の輸入を制限するようになる。それが、いわゆる“保護貿易主義”、あるいは“保護主義”と呼ばれるものだ。
今後、“保護主義”が一段と鮮明化すると、各国が輸入をブロックしてしまうため、活発な貿易が阻害されることになる。“保護主義”は、各国にとって長期的には決してプラスにはならない。むしろ、世界経済の発展にとって、マイナスの要因となることは避けられない。
特に、わが国のように自動車や機械などの工業製品を輸出して、原油などの工業製品の原材料や食糧を輸入する貿易構造を持つ国にとって、世界的な“保護主義”の台頭は、国際的な貿易の低下を通じて致命的な打撃となることも考えられる。
かつて、1930年代の大恐慌の末、主要国は短期的な自国の利益を優先するあまり、一斉に“保護貿易主義”に走り、世界の貿易量が大きく落ち込んだ。
そのため、それぞれの国は必要な物資を輸入できなくなったり、製品を輸出することができなくなった。結果として、経済活動に大きな制約がはめられることになった。
そうした状況を打開するため、当時の主要国は「“力の論理”=武力」で、工業製品の需要地を確保する戦略に出た。それは、最終的に人類史上最大・最悪の第2次世界大戦を導くことになった。
過去のこういった経緯を考えても、昨今の不況下で“保護主義”の台頭を阻止できないと、再び大規模な経済混乱や紛争の発生につながる可能性もある。かつて大恐慌が、第2次世界大戦に繋がった苦い歴史が繰り返さないためにも、“保護主義”の台頭を抑えることが必要だ。
では、そのようなトレンドは、実際にどれだけ広がりつつあるのか?
リーマンショックをきっかけに世界経済がこれだけ大きく落ち込むと、各国が被るマイナスの影響はことのほか深刻だ。それは、昨年10月以降、わが国の経済において戦後最大の急落が2四半期続いたことを見ても明らかだろう。