河合 ある程度賢くて、若い感受性を持っている人の意見を聞くとおもしろいですよね。情報や物事の見方も違って考えさせられます。私の授業でも、しっかり自分の意見を言える学生、話すことができる学生もいます。やはり留学帰りの学生は発信力がとても強くなりますね。そういったスキルをつけてほしいと考えています。
水永 そうですね。Twitterがなぜ流行るかというと、みんな意見を表明したいわけです、本当は。
河合 本当にそう思います。それなのになぜクラスでは発言しないのでしょうか?
水永 ここ数年、学習院大学の授業でFacebookページに書き込みをさせているんです。次の授業までの期間に、感想や質問を入れてきます。驚くほど積極的なコメントが出てきますよ。
学期中に1回はそこに書き込んでくれれば出席したと見なすから、と言っています。「1回も書かないといたかいなかったのか判別できないから、1回は書いてね」というくらいの言い方です。それでも、毎週書き込む学生が出てきます。質問には全部に答えています。
河合 それを答えるのは結構大変ですよね。
水永 大変ですよ、1回の授業で100個くらいありますから。書き込みを見ていると、学生は自分が思っていること、質問や感想、コメントを書きたいんです。授業中にはまったく手が挙がらないので指名だけですが、Facebookには山のように書くんですよ。それは20年前になかったことですから、たぶん次の10年か20年経つと、アメリカ並みにクラスで発言する時代に変わるような気がします。
河合 中学・高校でアクティブラーニングの授業を受けている学生は、やっぱり発言力が違いますね。私の授業に本当は大学1年生は入れないんですけど、積極的で優秀なので受け入れました。その学生は、高校生の時に英語でビジネスコンテストに出場していたんです。高校教育の大切さを感じます。
プレゼンスキルの習得は
キャリア教育の一つ
河合 おもしろかったのは、彼女は「英語だと私は人格が変わり、とても積極的になれる。それが日本語だとシャイになってしまう」というのです。また帰国子女の男子学生からは英語で話すほうが自由に話せると。「外国語を話す時、人格を変えていいのでしょうか」という質問を受けたこともあります。
水永 それはありますよね。私もいつも言われます。英語になると、普段とまったく違ってアグレッシブで、ジョークばっかり言っていると。
河合 典型的なゴールドマン・サックスの人になっちゃうわけですね(笑)。
水永 そうみたいです。気持ちが強くなって、自信がある振る舞いで。いつもジョークを言わないといけないんです、英語のときは。日本語ではあまり冗談を言わないですよね。英語のときは、何かを伝えるときでも冗談の中に入れて伝えたりしますね。
河合 私は、日本語でも変なジョークを言っていますよ、一人で(笑)。
水永 外国が長いから混じっているかもしれないですね(笑)。私は大人になってから英語を覚えたので、まったく別々です。モードが切り替わります。
河合 彼女が通っていたのは普通の公立高校ですが、英語でプレゼンなどのハイレベルな教育が高校で始まっているのに驚きました。その話を聞いて、高校はどんどん変わっているのに、大学がのんびりしていたら、そういう子たちはきっと海外へ行っちゃうんだろうなと思いました。学校教育で自分の意見を発表するという、基本的なことをやらなければいけません。
水永 それは大事ですよ。大学生になってからでは、本当は間に合わないですね。
河合 私自身、そういう意味ではとても苦労しました。高校までは日本語でも発言する機会があまりなかったのに、突然、英語でそれをしなければならなかったのですから。
水永 私は、職業の選択についても知識がなさすぎて、何が何だかわかりませんでした。少年の夢のような次元が高校くらいまで続いていましたから。それが、大学に入るといきなり現実になる。
河合 お金の話をしてはいけないという感じもありますよね。大人もあまり仕事の話をしてくれませんし。
水永 アメリカでよく、子どものときにレモネードを売った話を聞きますが、日本の小学校や中学校でレモネードを売ったら怒られますよね。でも、プレゼンテーションとキャリア教育は早い段階で教育すべきだと思います。分けて話をしていますけど、実は一緒なのかもしれませんが。
河合 そうですね。同感です。
水永 自分をちゃんと見せること、相手を説得すること。それから、職業の選択とビジネスで利益を上げること。全部つながっていますね。