世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車の今3月期の決算予想は、昨年末時点の1500億円の赤字から、4000億円の営業赤字へと大幅下方修正された。わずか1ヵ月あまりの間にトヨタの収益がさらに2500億円も落ち込むと予想していた人は、ほとんどいなかっただろう。

 このような背景には、世界的な景気後退に伴う急激な需要の落ち込みがある。世界の景気は、想像を絶するほどの勢いで急落しているのである。

 それに対応して、トヨタは、2月、3月に合計11日間の“臨時操業停止”を予定しているという。同時期の生産台数は前年対比の50%弱にまで下落する。生産調整の規模は半端ではない。

 一方、大手総合電機メーカーの苦境ぶりもすさまじい。たとえば、日立製作所は、3月期の決算予想を大幅下方修正し、最終赤字が7000億円程度になると発表した。主力商品である薄型テレビなどの需要が、大きく落ち込んだことなどが主な理由と見られる。

 それに伴い、グループ全体で約7000人を配置転換・削減する予定だという。また、NECも同2800億円の赤字になる見通しで、こちらもグループ全体で2万人分の人件費の削減を実施する予定だ。

 その他にも、ソニー、パナソニック、東芝など大手企業の業績下方修正は、それこそ枚挙に暇がない。企業を取り巻く経済情勢は、信じられないほどのスピードで悪化しつつあるのだ。

3月から決算発表にかけて
「日本経済危機説」に現実味

 問題は、こうした企業業績の悪化が、一段と経済全体の脚を引っ張ることだ。企業が赤字に落ち込むと、リストラを行なわざるを得ない。職を失った人々は、次の職場を探す。しかし、現在の状況で、簡単に新たな働き場所が見つかるとは考え難い。

 収入が減ると、当然、生活を切り詰める。人々が倹約をすると、モノが売れなくなる。モノが売れないと、企業の儲けは一層圧迫される――。

 こうして、経済状況はスパイラル的に下落することになる。専門家の間では“日本経済危機説”が根強く囁かれているが、多くの上場企業の本決算が締めを迎えて業績の全貌が判明する今年3月を皮切りに、市場に向けて決算発表が行なわれる5月くらいにかけて、それが一層盛り上がる可能性は高い。

 負のマインドがさらなる景気悪化を招く――。現在のような企業の苦境ぶりを見る限り、“日本経済危機説”はあながち的外れの見方でもなくなっていることが、恐ろしい。