ちなみに、文化庁と経済産業省の妥協案は、そもそものデジ検の合意を最大限尊重しようという案となっている。つまり、ダビング10の問題を、著作権法の抜本改正や、その際に想定される現行のメーカー介在型の補償金制度から、権利者と消費者の直接契約を可能にする新たなシステムへの移行といった懸案と切り離し、暫定的に補償金制度を存続させ、ダビング回数が10回に増えることに伴う補償額の上積みによって問題の解決を目指しているからである。

 そして、メーカーが懸念していた補償制度の対象機器の安易な拡大が起きないように、今回の補償の対象をHDDへのダウンロードではなく、ブルーレイへのダビングに絞り込むことも明確にした。本来ならば、これでハッピーエンドとなるべきリーズナブルな案に映る。

 にもかかわらず、権利者が頑なな姿勢を採っていた背景に、非常に真っ当に見える理由だけでなく、この際、日頃の不満も解決しようというかなり強引な思惑の両方が存在していることは見逃せない。

 まず、後者から言及すると、メーカーの儲けを著作権者に還元すべきだとか、この際だからiPodのような携帯音楽端末の普及で減少してしまった補償金の回復を目指したいといった議論である。還元論はメーカーと権利者のビジネスモデルの根源に係る問題だし、地デジ・ダビング10限定だったはずの今回の話の中で、音楽端末問題を持ち出したのは筋違いと言わざるを得まい。

 一方、前者には、両省の合意内容の詳細がまだ十分に周知されておらず、1)ブルーレイの指定がデジタル放送に限定されるのかどうかが不明、2)補償金制度の抜本見直しと今回の妥協案の位置付けについての説明が不足している――といった問題が含まれている。

 関係3省庁がこうした疑問に早急に誠実な回答をすることはもちろん、一部メーカーも強硬に反対姿勢だけを主張するのではなく、自分たちさえよければよいと言わんばかりの従来の姿勢を改めるべきである。そのためには、将来の補償金制度の抜本改革への積極的なコミットメントを打ち出し、権利者が抱える歴史的なメーカーへの不信感を解消する必要があるのではないだろうか。