相手が恐れないと抑止にはならない
逆に巻き込まれるリスクが高まる

――安倍総理は米軍との協力関係を強化することが、抑止力を高めると盛んに強調しています。

 総理は5月14日の記者会見でも、アメリカの船を守れば抑止力が高まって、戦争に巻き込まれることは絶対にないとおっしゃっている。そこは全く論理的におかしいと思っています。

 アメリカの船を守るということは、アメリカの船に対する防護力は高まりますから、その船に対する攻撃は抑止されるかもしれない。ガイドラインには情勢緊迫時にデモンストレーションの演習をやれば、抑止力が高まると書いてあります。結局、これを使う場面というのは、アメリカ海軍と中国海軍が対峙している、そんなところに自衛隊も入って、一種の威嚇的な演習をやるわけです。

 そういう形で相手を黙らせようという発想ですね。相手が恐れれば抑止になるかもしれないが、相手が恐れなければ抑止にならないし、本当の戦争になってしまうかもしれない。そのような訓練や演習は一種の挑発行為でもある。安倍総理がおっしゃっているのは、そうやれば中国が必ず恐れるからという前提に立っているんですね。

 もし中国が一戦交えてもいいと覚悟を決めていれば、抑止できません。緊張を高めたが故に、現場の誤った判断で戦闘が始まるというリスクもある。だから、こういうことをやれば抑止力が高まって、戦争に巻き込まれないというのは、むしろ逆だと思います。やれば、巻き込まれるリスクがものすごく高まる。そうした緊張した現場に自衛隊が入っていって、武器を使うということを言っているのですから。

 つまり安保法制とは何かと言うと、ガイドラインを実現するための法制です。安保法制はあちこちに飛んで、非常に分かりにくいので、むしろガイドラインを読むほうがいいと思います。何をやろうとしているのか、全体的な流れが非常によく理解できる。

――ガイドラインが米軍との協力を定めたものであるのに対して、国際社会への協力として海外で他国軍の後方支援などを定めたものが、新法である国際平和支援法と国連平和維持活動(PKO)協力法改正案です。ここでも戦闘に巻き込まれるリスクが高まるのでしょうか。

 やはりポイントは、他国軍隊への後方支援のときに――重要影響事態でも同じですが――戦闘の現場でなければ行けるし、弾薬も提供できることです。これもこれまでとは違った質的危険を伴います。