チューリッヒのホテルでの逮捕劇から数時間後、スイスの司法当局は2018年と2022年の開催地決定をめぐって不正行為の疑いが存在するとして、捜査を開始したと発表した。現在、FIFA関係者らによる不正の捜査はアメリカとスイスの司法当局が中心となって進められているが、起訴されたうちの6名はアメリカへの身柄引き渡しを拒否している。国際刑事警察機構(インターポール)は3日、被疑者を発見したら手配国へ身柄を引き渡す協力を各国に求めるレッド・ノーティスと呼ばれる通知を出し、身柄引き渡しを拒否する6名の名前と顔写真を公開した。前述のジャック・ワーナー氏もこの6名に含まれている。

各国のメディアは
今回のスキャンダルをどう見ているか

 今後の捜査に注目が集まるFIFA関係者らが関与した一連の不正事件と、関係者の逮捕・起訴。各国のメディアはこれらの事件をどのように伝えているのだろうか?ジャック・ワーナー氏が逮捕されたトリニダード・トバゴの首都ポート・オブ・スペインでニュースサイト「グローバル・ボイス・オンライン」のカリブ海地域担当編集者として働くジャニーン・フランコ氏に話を聞いた。大臣経験者で現在も有力政治家としての顔を持つワーナー氏の逮捕は、現地で大きな驚きとともに伝えられているとフランコ氏は語る。

「トリニダード・トバゴではこれまで公職に就く人物が汚職で有罪判決を受けたケースが無かったので、自国ではなくアメリカからの圧力があったという点を考慮しても、ワーナー氏の逮捕は前代未聞の話として報じられています。国内メディアも連日ワーナー氏の動向を報じており、ソーシャルメディアでもアメリカへの身柄引き渡しについて賛否両論巻き起こっています。サッカーの利権をアメリカを加えた西欧諸国が独占するために、FIFAの解体を開始したという陰謀論が地元ではネットを中心に話題となっていますが、メディアは冷静にニュースを伝えていると思います」

 司法省が本格的に動き始めたアメリカ国内では、FIFAの一連のスキャンダルや関係者の逮捕はどのように報じられているのだろうか。ボストン・グローブ紙でサッカー担当記者として1990年イタリア大会から7大会連続でワールドカップを取材し、現在もESPNなどのスポーツメディアで活躍するジャーナリストのフランク・デラッパ氏は、アメリカ国内のFIFAに対する関心の高さが、スポンサーでもある米企業を動かす要因になったのではと指摘する。

「アメリカの全ての主要メディアがFIFAの動向を連日トップニュースで伝え、スポーツ局のESPNまでもがチューリッヒから中継を続けるほどだった。アメリカ国内のスポーツニュースでFIFAがここまで大きく取り上げられた例は過去になく、視聴者がFIFAという組織の閉鎖性や腐敗体質に強い興味を抱いていたことが垣間見える。この流れを迅速に察知したのがFIFAの公式スポンサーとして年間に数千万ドルを支払っているコカ・コーラーのような米企業で、FIFA会長のブラッター氏に組織のイメージ向上を早急に行わなければスポンサーから撤退すると圧力をかけたのだ。結果、これがブラッター辞任の引き金となった」