日本の原子力政策が揺れている──。2030年度の電源構成(総発電量に占める各電源の割合)の政府案が、有識者会議での議論を経て決定した。注目された原子力の比率は20~22%程度、再生可能エネルギーは22~24%程度で決着した。

最後まで反対意見は出たが、最終的には委員長を務めた坂根正弘・コマツ相談役に一任する形で会議は閉幕した
Photo by Yasuo Katatae
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 しかし、この数字の裏には、政府の強引な思惑が透けて見える。委員を務めた橘川武郎・東京理科大学教授は、「老朽原子力発電所の運転延長と再稼働の可否を判断する原子力規制委員会の頭越しに、再稼働を許可すると言っているのも同然だ」と批判する。

 現在の日本にある原発は43基。原発は運転開始から40年が寿命と定められている。43基のうち30年末時点で運転40年未満の原発は18基しかない。それに現在、建設が進んでいる中国電力の島根原発3号機、J-POWERの大間原発の2基が加わると寿命前の原発は20基となる。それ以外の25基は原則、寿命で廃炉となるはずだ。

 ところが、寿命前の20基を稼働率70%で運転させても、総発電量に占める割合は約15%にすぎない。電源構成案にある20~22%に7%分も足りないのだ。

 今回の議論では、原発の新増設(リプレース)は想定していない。ということは、必然的に寿命を迎えた25基の老朽原発を動かして、20~22%まで持っていくということになる。

 25基の中には、福島第2原発の4基と活断層の問題、地元自治体の反対で再稼働の見込みが薄い4~5基が含まれており、それらを除くと16~17基。実質的にこの16~17基で、足らない7%分を賄うことになるが、それには計算上、15基程度動かさなければならない。つまり、稼働開始から40年たつ老朽原発のほとんどを動かすことを意味しているのである。