大塚家具の大塚久美子社長は、「委任状争奪戦など一連の騒動の原因は、社外取締役の選任、取締役会における健全な議論の在り方などコーポレートガバナンスをめぐる対立にあった」と語る。

平時は経営への監督と助言<br />非常時にはトップの首も切る大塚久美子社長は、大塚勝久前会長との委任状争奪戦に勝利し、取締役会の過半数を社外取締役とした。Photo:AFP=時事

 久美子社長の意向で、大塚家具では2008年に初めて社外取締役が選任された。07年のインサイダー取引事件の反省から、経営の透明性強化、コンプライアンス徹底を進めるためだ。その後、13年には3人にまで社外取締役を増員してきた。

 2人から3人に増やす議案を決定する13年の株主総会前の取締役会では、増員を主張する社外取締役と久美子社長、増員の必要はないとする創業者である大塚勝久会長(当時)などとの間で激論が戦わされた。

 こうした対立が高じて、久美子社長は14年7月に社長職を解任され、勝久氏が会長兼社長に就任するのだが、その後の勝久氏の取締役会運営はあまりにもバランスを欠いたものだった。

 資料を取締役会として要求してもすぐに出てこない。議案に対する質問をしてもストレートに答えが返ってこない。また、久美子社長時代には半期ごとに、機関投資家、アナリスト向けの決算説明会が開催されていたが、勝久氏が社長に復帰して以降の14年12月期第2四半期に関する決算説明会は開かれなかった。

 こうした現状に社外取締役(3人)、社外監査役(3人)は危機感を覚える。15年1月中旬、社外役員6人が勝久氏に対し、取締役会における健全な議論、インベスターズリレーション(IR)体制の強化など6項目の要望書を提出する(下表参照)。

 しかし、勝久氏は聞き入れなかった。その結果、社外取締役2人を含む過半数の賛成で1月末に久美子氏の社長復帰が決まる。この後の展開は周知の通り、取締役選任などをめぐって、勝久氏による株主提案と会社提案の委任状争奪戦となり、会社提案が可決された。現在、同社の取締役は10人、そのうち社外取締役が過半数の6人を占める。久美子社長は今後、指名、報酬、事業戦略などを担当する委員会を、社外取締役を含む形で立ち上げる考えだ。

 3月に発表された金融庁と東京証券取引所が作成したコーポレートガバナンスコードで、東証1部・2部上場企業に対し、2人の独立社外取締役の選任が事実上義務付けられた。従わない場合、罰則はないが、その理由を説明しなければならない。