フレディー・ハバードと言えば、ジャズの王道を歩んできた正統派ジャズの権化の如きトランペッターです。1960年6月録音のデビュー盤「オープン・セサミ」(写真右)は、かのブルーノート・レコードから発表しています。この事実がハバードの実力と立ち位置を如実に物語ります。厳しくも先進的な審美眼(耳)を持っていたブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンが認めた神童ここに在りです。

 ハバードの音楽の幅は脅威的です。デビュー盤から半年後には、オーネット・コールマン(注:先週、85歳で逝去)の「フリー・ジャズ」(写真左)に参加。これは、疾風怒濤の1960年代の幕開けを告げるジャズ史上最大の問題作です。完璧な自由が導く全編即興演奏。音楽の原風景は、混沌の中にあったのかもしれません。

 このフリー・ジャズから、「ミストラル」への飛躍がハバードの真骨頂です。遥かなるジャズの旅路を経て辿り着いた心地良き響きです。

溢れる才能が生みだした新時代のジャズ

◆クリスチャン・マクブライド「カインド・オブ・ブラウン」

「カインド・オブ・ブラウン」と聞けば、ジャズ愛好家ならば誰もが、ジャズ史に輝く金字塔、マイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」を想起します。半世紀余を経て『ブラウン』から『ブルー』へと音楽的に挑んだ訳です。タイトルからして新しい時代の自信に溢れています。

 冒頭“ブラザー・ミスター”の腹に響くベース音が、陽光を浴びる新しいジャズの始まりを実感させます。

 クリスチャン・マクブライドは、当初は新世代のベース奏者として頭角を現しました。コントラバスもエレキベースも自在に弾き倒します。1995年のデビュー盤「ゲッティン・トゥ・イット」(写真左)は、聞き応えのある濃厚な演奏で、将来の大器を予感させました。サイドマンとして300枚以上のアルバムに参加していることから、演奏者としての力量は証明されています。

 マクブライドの才能は、常人の予想を遥かに凌駕するものでした。音楽的な力量と許容量は巨大で、マクブライドにかかれば、4ビートの伝統的なジャズも、16ビートの先端的ファンクも、今を実感させる生きた音楽になります。