プロ経営者として5年以上の間ミスミグループ本社の代表取締役社長等を務めてきた高家正行氏と、今年5月に『プロフェッショナル・リーダー』を上梓したアリックスパートナーズ日本共同代表の野田努氏。それぞれ経営プロフェッショナルと企業再生プロフェッショナルとしての立場から、今の日本企業に求められるリーダー像を語り合ってもらった。(構成:谷山宏典)
グローバルに通用するリーダーが
日本企業に不足している
野田 高家さんが2014年まで代表取締役を務めたミスミグループ本社は、海外企業の買収など積極的なグローバル展開で業績を伸ばしてきました。ご自身の経験を踏まえながら、日本企業が直面している課題について見解をお聞かせいただけますか。
高家 日本企業と一括りにするのはやや乱暴ですが、それでもグローバル展開は必須の状況になっています。既存事業における日本市場の成長力は限られていて、伸びしろは海外、とくに新興国が大きいことは明らかです。
野田 たしかに国内市場は伸びしろが限定されていますね。一方で、キャピタルマーケットをはじめとしたステークホルダーからは、欧米企業と遜色のないレベルでの収益力と成長が求められている。となると、海外市場に打って出ないことには対応できない。この流れはますます加速していくのではないでしょうか。
高家 ただ、日本企業にとってグローバル展開は喫緊のテーマではあるものの、課題もあります。ひとつには、グローバル展開を担う人材です。新商品を開発したり、新事業を立ち上げたりするのに比べても、特にグローバルに通用するリーダーを育てるには時間がかかります。ゼロから社内で育てるには、5年、10年は必要です。
また、グローバルに会社を経営していく仕組みづくりも、日本の企業はまだまだ十分ではありません。たとえば、本社集権経営で行くのかそれとも分権経営で行くのか、という意思決定の仕組みやガバナンス体制とか。そのあたりのことは野田さんのほうがよくご存じですよね。
野田 本社集権経営って、アメリカの企業に比較的多いですよね。買収した海外企業に対して、本社がこと細かに指示を出して、徹底してコントロールしていく。一方、ヨーロッパの企業はわりとローカライゼーション戦略をとっています。世界各国の傘下企業に適度に権限を委譲して、ゆるくグローバルの統治をしている。