グローバルで活躍するための
プロフェッショナルスキルとは?

野田 海外企業の買収や事業統合の際に不可欠なプロフェッショナルスキルについての私の考えは『プロフェッショナル・リーダー』の中で書かせていただきました。高家さんが考えるプロフェッショナルスキルとは?

高家 著書を拝見させていただき、共感するところがいくつもありました。たとえば、経営リーダーが備えているべき重要な資質の1つは、私も「強い危機意識」だと思います。

まずは、周囲の人が誰一人として危機意識を持っていないところから始まります。しかも、何らかの問題があったとして、目に見えるのはただの現象でその根っこに隠れる本質的な問題は何なのかを見極める必要があります。そこで初めて、目の前の問題は今すぐ対処すべきか、それともしばらく放っておいても大丈夫なのか、優先順位が決まります。そこでは、蓄積された「経営リーダーとしての経験則」と仮説・論理思考に基づく「客観的な分析能力」が求められます。

野田 「本質的な問題を見極める力」や「複数の課題に優先順位をつける力」ですね。

高家 そうです。自らの危機意識に基づき本質的な問題が明らかになったら、次にそれを組織全体へ示さなければなりません。野田さんの著書では、中国の赤字工場で主人公が改革を進めようとすると「調達部門は精一杯やっている。悪いのは生産部門だ」「金を出さない本社が悪い」と責任の擦り付け合いをはじめます。責任転嫁をする現場の発想はよくある光景で、危機がまだ自分事になっていない証です。そもそも経営リーダーが感じた危機意識を、インパクトを持って組織隅々まで浸みわたらせるスキルも、プロフェッショナリティとして大切です。

野田 危機意識を共有するには、具体的にどんな方法が有効だと?

高家 客観的な事実を提示することじゃないでしょうか。たとえば、お客様からこんなクレームが入っているとか、市場でのシェアがこれだけ他社に奪われているとか、とにかく言い訳できない事実を積み上げていく。と同時に、決して他人事にさせないために、「生産部門に課題があるが、調達部門にも課題がある」と、各々の組織に責任があることを個々の社員に突きつける。そこまできて初めて、「たしかにうちの会社は危機的状況かもしれない。その責任は自分にもある」とみなが気付き、ようやく改革を一歩進めることができるのです。

スピードこそが
実行の成否を大きく分ける

野田 高家さんが実行に際して重視していることは何でしょうか?

高家 スピードです。改革というのは、従来やってきたことを変えるわけで、ある意味非日常的なストレッチされた状態です。この状態で、長距離マラソンを走っては、社員は疲弊してしまいます。だからこそ、全速力で短距離のように走り抜けなきゃいけない。

また、改革などの困難なプロジェクトに取り組むとき、最初からアーリーサクセスの種を埋め込んでおくことも重要です。どれだけ厳しい局面でも、必ず小さな成功を得る場面ってあると思うんです。それが計算通り上手く行ったら、その成功をみなで思いっきり派手に分かち合う。すると組織全体の元気が維持されるし、自分たちがやろうとしていることに自信をもってくれます。